私が生きていることは私の中で永遠に生き続けていく。それだけでいいの。
例えば、夜の闇に消えてしまいそうなあの子の小さな肩も、常夜灯に向かってなんとか歩き続けるあの子の細い足も、それぞれ皆、自分の中で永遠に生き続ける。
トット、と雨が降っていて、輪郭のない大空が私の全てを囲んでいる。私は目を閉じて、あの人を思い出す。私にはあの人が必要だった。朝起きて最初の息を吸う時も、夜眠る時、意識ある最後の息を吐く時も。歩くその一歩を踏み出す時にあの人が、次の一歩を踏み出すときにもあの人が、そこにいてくれるだけで、私はそこで生きていられた。だから、私にはあの時あの人が必要だった。
目を開けると、あの人がそこにいた。
息を吸う、吐く。
あの人が振り返り、私に言った。
「行かないで」
昨日は、ふと空を見上げることを忘れてしまった。心には余裕がなく、けれども涙はあった。そのせいで、見上げることを忘れていたのだった。
今日、やっと、私は空を見上げた。青い青い空だった。空も雲もこの手につかむことはできないのに、必ずそこにあるものだと知っている。どこまでも続くこの空は、昨日にも明日にも続いていた。
ひゅっと、肌に触れた風が冷たくて襟を立てた。もう秋も終わるのかと頭の中で最近の色々を巡らせてみたけれど、秋に紐づくものは1つも思い浮かばなかった。代わりに、最近偶然に再会したあの頃の恋人の顔が浮かんだ。私は明日の遠足のお弁当ように買った食材が入った袋を片手に襟を正して歩きだす。衣替えでもしようかね。
疲れたとか、もう嫌だとか、辞めたいとか、止めたいとか病めたいとか。今のこの私を構成する全てのものを壊して無くしてゼロにして、丁寧に作り直したい。そんなことをいつからかずっと考えて生きている。思い切り声が枯れるまで叫び続けている。
声、出してないけど。