トット、と雨が降っていて、輪郭のない大空が私の全てを囲んでいる。私は目を閉じて、あの人を思い出す。私にはあの人が必要だった。朝起きて最初の息を吸う時も、夜眠る時、意識ある最後の息を吐く時も。歩くその一歩を踏み出す時にあの人が、次の一歩を踏み出すときにもあの人が、そこにいてくれるだけで、私はそこで生きていられた。だから、私にはあの時あの人が必要だった。
目を開けると、あの人がそこにいた。
息を吸う、吐く。
あの人が振り返り、私に言った。
「行かないで」
10/24/2024, 10:44:42 PM