ななせ

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4/22/2024, 7:19:30 AM

空にある、あの白いのは何ですか
あれは魚じゃ。魚の群れじゃ。
草々を揺らす、透明は何ですか
あれは鳥じゃ。飛び交う鳥じゃ。
暗い時に空にある、たくさんある、あれは何なのですか
あれはなにでもない。なにでもない。
ではあれ、空から落ちてくるあれは何なのですか
あれは泪じゃ。
誰の泪ですか
ここに生きておる皆の泪じゃ。
なぜ泪が空にあるのですか。我らは下におりますのに
泪を集める象がおってな。その象が、我らの泪を集めて空に行くのじゃ。
象はなぜ空から泪を落とすのですか
象が落としておるのではない。泪のほうで勝手に落ちてくるのじゃ。
集めた泪が無くなって、象は悲しまないのですか
悲しむ脳が、無いんじゃよ。無くなったことにすら気が付かぬ。故に何度も泪を集める。
象は、なぜ脳がないのですか
犬は太陽、虎は月。鳥は風、象は雫。雫に、脳があると思うか?
思いません、けれど、象は可哀想です
なにも可哀想ではない。なにが可哀想なものか。
なぜですか
そういうものじゃ。昔から、そういうものと決まっておるのじゃ。
そうですか、そうですか
さあもうおやすみ。また明日。
朝になったら、空には犬です


お題『雫』

4/21/2024, 3:05:07 AM

したい事はある?
──ううん。
食べたい物はある?
──ううん。
欲しい物はある?
──ううん。
無欲だね
──違うよ。
じゃあ、何を欲しているの?
──ぼく、ここから出たいよ。おうちに帰りたいよ。ママのごはんがいいもん、パパとキャンプするってやくそくしたもん。無欲じゃないよ。ぼくが何回いってもきいてくれなかっただけじゃないか。ねえ、ここから出して。それ以外は、ぼくいらないよ。
それは駄目だよ。でも、それ以外なら何でもしてあげる。何が欲しいの、言ってみなさい
──このひと、きらいだ。



お題『何もいらない』

4/19/2024, 1:14:37 PM

もし、未来が見えていたなら。
君と出会った時から、もっと上手く立ち回れていたなら。
君の蛮行を必死で止めて、彼を殺させたりなんかしなかった。
僕は君を許さないし、君は僕を憎むだろう。
そして僕は君を許すことはない。彼女を一人ぼっちにして、悲しませることもない。
ああ、でもきっと、僕はやり直せたとしても君を選んでしまう。彼女を選ぶことなく、君と二人で死んでしまう。
そんなことを考えながら、
暗く深い海の底で、
瞳を閉じた君を眺めて、
その時感じた気持ちが何だかとても気持ち悪くって、
眠った。


お題『もしも未来を見れるなら』

4/18/2024, 1:02:38 PM

この世に色が無くなったら、どんな世界になるだろう。

まず、信号機は意味を無さなくなるから、全部が音で表すタイプのものに付け替えられる。それなら聴覚障害のある人はどうするんだと言う問題はあるが、周りの人が歩くのを見て合わせれば案外何とかなりそうだ。
それから、色んな模様が発明される。服の色はみんな同じだから、柄で他と差をつけて、ファッションセンスを競ったりする。
分からなくなってしまえば、肌の色で差別されたりするのは無くなるんじゃないか。
あれ。
指摘されて気が付いたけれど、私が言ってるのはモノクロだ。
無色なら、白色も黒色も無い。全てが透明だ。
透明、透明。
透き通っているのなら、自分の体も相手の体も、何にも見えない。相手の息遣いで、自分の声で、ここにいると叫ばなければ気付いてもらえない。
なら、眠ってしまえばどうなるのだろう。自身の存在も、目覚めたら無くなってしまっているのではないか。しかも、それは誰にも気付かれることは無い。
見えないから、返事をしていないだけだと思われるのがオチだ。
誰にも見えないまま死んでしまえば、死んだことさえ気付かれない。泣いて悲しむ者さえいない。だっていないなんて分からないから。
何だか、寂しい虚しい世界だ。


お題『無色の世界』

4/17/2024, 12:56:09 PM

「二階から、春が落ちてきた」

このアプリを入れているのなら、このフレーズに見覚えのある人は少なくないと思う。
伊坂幸太郎の『重力ピエロ』は、私も好きな名作だ。
きっと、私がこれからどんなに物語を書いたとしても、あんなに心掴まれる出だしは書けないだろう。その後のこちらを見透かすような言葉で、私はもう心を奪われていた。
今回のお題『桜散る』では、
桜が散る、花弁が落ちてくる、春が落ちてくる、と連想すると、どうしても序盤に回帰してしまう。
キャッチフレーズはどんなものにしようか、少し先人の言葉を借りて、オマージュのようなものをしてみたい。
そうするなら、「空から、春が落ちてきた」か。
樹の上から、でも良いかもしれない。
いつもは入学式の頃には散ってしまっているのに、今年は遅咲き故に長持ちだった。あんまりにも綺麗だったから、桜の精が散らせないように粘っていた、なんて、それはメルヘンすぎるか。


お題『桜散る』

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