吐き出した息が白くなる。感覚が殆どなくなった指を画面の上で滑らせる。待ち合わせよりもずっと早い時間だけれども待たせるよりはずっと良いだろう。
この冬こそ、あの娘と…
フワフワと足元が覚束ない。ぐるぐると回る思考と視界は止まることを知らず座っていることもままならなくなってきた。少しでも体力回復に努めようと机に突っ伏す。今日中に終わらせるはずだったレポートの入力画面ではギャレットがチカチカと俺を嘲笑っているようだ。
体調管理すらできないとは、なんとも情けなくてポロポロと涙が溢れた。
『1000年先も』
今日まで、本当に長かった。
何度も何度も苦しんで、死にたくて。遠い昔に俺を置いていった家族の顔も幼馴染の声も思い出せないくらい永いながい時間。死ぬことを許されない俺は永遠に近い時を生きた。もうこの永遠も半ばを過ぎても良い頃なのではなかろうか。死にたいと心底願うのはいつも変わらなくて。
でも、彼に出逢ってから。
彼らに出逢ってから、全てが変わったんだ。
真っ暗で、海の底のような地獄から俺を掬い上げてくれた彼らとなら、もう少しだけ生きてみたいと思ってしまうのだ。
もしも、1000年先の遠い未来で、彼らの事を語り継ぐのが俺の仕事ならば。この半ばを過ぎた永遠を生きようじゃないか。
「近しい人が死んだのに、あなたがまだ生きている理由?その人を忘れないでいるためですよ。簡単でしょ?」
『お茶が運ばれてくるまでに』より。
#👒💣
『海の底まで、』
海の底のような、暗くて苦しい道を歩いていたんだ。いつの日か俺を照らしてくれた光も俺を優しく包み込んでくれた愛も見失って、それから随分時が流れた今もただ一人でずっと歩いていたんだ。道のゴールが見えることは一向になくて、きっと俺は永久にこのままなのだろうと漠然と理解したつもりでいた。いた、はずだったのに。
「おれは、お前がいないと________!」
いつの日だったか、俺を照らしたあの眩しいくらいの光が、俺を優しく包み込んでくれた溢れんばかりの愛がまた見えたような気がしたんだ。
#🥼💤
『君に会いたくなるのは、』
別に何も君が好きだとかそういう話ではない。無いったらないのだ。断じて。それでもふとしたときに顔が思い浮かぶのも、会いたくなるのも、いつだって君なのだ。
「あ、次の休み行きたいところがあるんで予定開けといてくださいね」
そんなたった一言でこんなにも舞い上がる私に、単純以外の表現ができようか。どこいくん、なんて聞くよりも先にわかったと了承の返事をしてしまう私はきっと正真正銘本物の阿呆だ。