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11/6/2025, 12:28:42 PM

時を止めて

「貴方はいつまでも褪せることがないね。」
穢れを知らない真白なワンピースから惜しげもなく晒されるすっと長い手足。可憐で不適な笑みを浮かべる君に僕は淡い想いを抱く。
年季の入った椅子に腰かけ、日々に思いを馳せた。
いつまでそうしていたのだろう。穏やかな日差しを右頬に感じて体を起こす。その暖かさに少しの憂いをもって窓へと視線をやった。綺麗な夕焼け空。
「綺麗だ。あの日もこんな晴天だったよね。」
「帰りがけ君が引いてくれた手を思い出したよ。」
「…」
「そっちでも楽しくやっているのかな」
窓に映った自分と目が合った。あの頃よりも伸びた背。あの頃よりも低くなった声。あの頃よりも増えた皺。
君の清廉なそのワンピースも、可愛くて大好きな笑みもなにもかも変わらないのに、僕だけがどんどん変わっていってしまう。僕だけが時を重ねてしまう。
貴方の記憶はいつか褪せてしまうのだろうか。
君が進んでくれないのなら僕だって進みたくなかった。

10/14/2025, 9:03:01 AM

LaLaLa Goodbye

今日はなんだかとっても晴れやかな気持ちで、空でも飛べそうな気がする。昨日までの悩みや鬱屈とした日々を全て忘れ去って、このまま飛び出してしまいたい。思い立ったが吉日。そうだ、飛び出してしまおう。こんな世界なら、私が見放してやろう。飛んでやるんだ。そうしよう。
私に後ろ指をさしていた同僚や頼りにならない上司、私の魅力に気づかず別れた恋人たち、残念だったな。もう私はお前たちの手の届く範囲にはとどまらないのだよ。今後一切何を言ったって思ったようにはならない。できることならば一生悔やんでくれ!さらばだ!
「未完で読みきれないのが悔しいよ、グッドバイ」
「君の言葉を貸してくれ」
「LaLaLa Goodbye」

10/10/2025, 4:16:18 PM

一輪のコスモス

黒ってなんだか縁起が悪い?
そんなこともないわ。少なくとも私にとっては。
この恋はもう終わってしまったけれど、それでも思うの。
悪くなかったって。あの人に恋した時間は、かけがえのないものだった。
私、いつの日かオレンジの花を持って言うの。
素敵な恋だったって。

黒/「恋の終わり」「恋の思い出」
オレンジ/「幼い恋心」

9/17/2025, 1:42:19 AM

答えは、まだ


貴方と出逢って幾年か過ぎました。
楽しく笑い合って、時に意見の食い違いから言い合いもしましたね。どれもこれも素敵な私の愛すべき記憶たちです。この先もそうして共に時を重ねられると信じて疑いませんでした。あまりにも楽観的で、今よりもずっとずっと子供だったのです。思えばあれは幸せの前借りだったのだと思います。
貴方と別れて、幾年も過ぎました。
貴方の優しい性格が好きだった。貴方の目を細める笑い方が好きだった。貴方の鈴の転がるような可愛らしい声が好きだった。今も貴方が私の脳裏にいるんです。
いつだったか私に言いましたね。
「     」
その時、なんと返したでしょうか。数分悩んだのちに貴方へ言葉を返したはずなのですがもう思い出せません。
今の私にはそれを返せるだけの想いも言葉もありませんから。いつの日かまた貴方に会えたならその時に聞いてください。それまで、答えは、まだ

11/12/2024, 2:57:38 PM

飛べない翼

雪のように白く少しの穢れだってない純白の翼。陽に照らされると虹のように柔らかい光を纏うそれは、すれ違うモノ全てが振り返るほどの美しさを持っていた。
何百年という時を経て今尚翼は人々を魅了する。足を留め、惹かせるのだ。以前のような柔らかい光や青空とのコントラストはもう見ることができないけれど、彼らはそれをも美しさとするらしい。一枚隔てた先にしか見ることのできなくなったそれに少しの寂寞を覚える。

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