11/12/2024, 2:57:38 PM
飛べない翼
雪のように白く少しの穢れだってない純白の翼。陽に照らされると虹のように柔らかい光を纏うそれは、すれ違うモノ全てが振り返るほどの美しさを持っていた。
何百年という時を経て今尚翼は人々を魅了する。足を留め、惹かせるのだ。以前のような柔らかい光や青空とのコントラストはもう見ることができないけれど、彼らはそれをも美しさとするらしい。一枚隔てた先にしか見ることのできなくなったそれに少しの寂寞を覚える。
11/9/2024, 4:34:19 PM
脳裏
君の記憶の中で深いものはなんだろうか。
私はあの人との記憶である。毎晩目を瞑る度に貴方が浮かぶのだ。もう現れてはくれない貴方が浮かぶのだ。どうして。
はやく思い出になってくれ給へ。
11/4/2024, 2:36:01 PM
哀愁を誘う
彼の人の薬指には約束がある。簡素ながらも綺麗に磨かれた其れはいつ見ても一点の曇りもない。初めて見たのは私がまだ学生の時分で、其れに強い憧れを抱いたのを覚えている。
あれから幾許の時が過ぎたのだろうか。よく手入れされた其れは変わらず彼の人の右手で煌めいていた。
11/3/2024, 1:10:01 PM
鏡の中の自分
指先を沈めるようにそっと触れる。硬く冷たい感覚が時間の経過と共にじんわりと温度を持った。
その中に映る私は変わり映えのしない呆けた顔でどこか不思議そうに此方を見つめている。何度繰り返すのだろうか。何時になれば気が済むのだろうか。夢と現との往来など、只の人には出来まい。私が此れに諦めのつく日は来るのだろうか。
11/2/2024, 4:15:35 PM
眠りにつく前に
寝るための支度を終えてベッドに身体を滑り込ませてふと息をつく。
何も考えずにうつらうつらとするこの時間が私はこの上なく好きだった。寝る寸前のこの感覚。どこか空虚でそれでいて心地が良い。思考する間もないこと、それがとても幸福だったのである。