NoName

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4/14/2025, 9:30:09 AM

触れたら破れそうな
柔らかい膜に覆われて

まだ何も知らない一粒が
同じ膜に覆われた粒たちの中へ流れていく

流れは早く
ただ流されるままに

通りすぎる剥き出しの粒にドキリとしながら
知らない粒に当たると
ちくりと痛みが走り
膜が一枚増えていく

先へ先へ

進むほどに膜は何重にも増えていく

粒は同じ場所へ流れていく
早くなったり
遅くなったり
ゆらゆら揺れながら

そうしてたどり着くのは穴
黒くて眠たい穴

一枚、また一枚
記憶の膜を潜り
裸になりながら

瞬きもせずに
静かに落ちていく

もう包まれていない

粒たちは一つになり
暗い底でゆっくりと溶けていく

3/5/2025, 10:28:41 AM

ここは暗くて
雨が降ってて
背の高い枯れ草がざわざわしている

あのぼやけた明かりの下には
だれかが生きているのに

何年も前からここにいる
このじめじめした場所にいる

囚われてはいない
なのに

なのに

あの明かりの下へ

暗闇は呼び止めていない
ただ
わたしがここに止まっている

頭が
腕が
足が
吐息すら

わたしをここに沈ませる

ただ一人
わたしがこの場所に
わたしを沈め続ける

明かりから離れたのはわたし

わたしは今も
雨のなか
沈んでいく

1/20/2025, 4:00:54 PM

"でも"

変わりたい
"でも"

変えたい
"でも"

進みたい
"でも"

いくつもの"でも"にぶつかって
それでも諦めきれなくて

怖がりな自分を抱き締めて
大丈夫、大丈夫

言い訳も全部
しっかり歩んでいる証拠だから

また明日

どんな明日でも大丈夫

"でも"がいくつ有っても大丈夫

人が生きるって
そんなに簡単じゃないから

1/5/2025, 2:27:30 PM

鋭い寒さに頬が赤らむ
許しを請うような陽光が包む

擦り合わせる手も
まだ温度は戻らない

ゆっくりと息をする
耳を澄ませ
枝の揺れを感じる

氷がひたりと溶ける音がする
春はまだ来ない
冬の音に耳を澄ませる