サトル、今日まで騙してきたことを許して欲しい。俺は君の父親ではない…この約束の日まで父親代わりとして君を守るよう頼まれたんだ。
君の本当の父、ソウイチに。
彼が生きている事を奴らが知れば、君の生命も危険に晒されるだろう。もはや君の存在は地球の命運さえ左右する。
機は熟した。
往来を絶たれたルートの復旧。ようやく目処が着く。火星へ繋ぐ"マーズ・ゲート"だ。
明日の未明。三日月が見えるわずかな時間だけゲートが開く。青空神社の鳥居をくぐれば分かる。
こんな大事な事を単刀直入に伝えるしか出来なくて、本当に申し訳ない。
全てに決着が着いたら、これからは本当の父親との時間を大切にしてほしい。
そして今までありがとう。
子どもの個性は色とりどり。スポーツ選手・音楽家・芸術家・花屋さん・宇宙飛行士…
大人の個性はどれも灰色。いつのまにかどれも似たり寄ったりで色が抜けている。
それが現実だから?
そういう時代だから?
これが自分の限界だから?
身体は大きくなるのに、卵の殻に閉じ込められている。"常識"や"限界"や"現実"で固められた殻で。
それは自分でつくった思い込みでできているだけ。周りや環境など関係ない…自分がどうしたいのか。
"自分はこんなものじゃない!"
その灰色の殻を自ら破ったとき、自分自身も前方の視界も再び色を取り戻す。
すべては自分次第。
子供の頃は、降り積もるだけでわくわくしていた。雪球・雪だるま・かまくら・雪合戦。
若い日々は、スキー・スノーボード・温泉・ホテルにペンション。娯楽や出会いのきっかけに事欠かない。
ところが、いつのまにか歳を重ねると…毎年格闘していたり。雪かき・雪除け・雪降ろし。
道路は渋滞、山では遭難、ホワイトアウト。
白い妖精は、いつから白い悪魔になった?
いや、考えすぎかな。
でも来ないとどこか物足りなかったり。
僕は大統領の息子。彼女は…政府が秘匿する最高機密。
これが長い物語の始まり。僕は彼女に一目惚れだったけど、あの澄んだ瞳はこの世界の住人ではないとすぐに分かった。
彼女は僕の視線に思いが乗っていることを見抜いていた。吸い込まれるその瞳からは
(私を解き放って…)
それが許されないことは子どもの自分にでも分かっていた。僕たちの敵になる存在かもしれない…
それでも僕は彼女の望みを叶えた。それが全てを失う選択だとしても。
彼女は僕に微笑む。
君と一緒に。
冬の早朝。まだ夜空の延長を散歩するのが楽しみのひとつ。冷えるけど冬の晴れた空って、星が澄んで見えるような気がする。