5/27/2023, 12:25:50 PM
私の隣にあなたがいる。
あなたの隣に私がいる。
雲が赤黒く渦巻く闇空の下、煮えたぎる溶岩の中を横切りその身を焼かれても、針の山を歩いて足から赤い血を流しても、そこにあなたと二人歩いていけるならそれは天国かもしれない。
私の隣にあなたはいない。
あなたの隣には私がいない。
穏やかな雲が流れる青空の下、春風に吹かれて揺れる一面のポピーの花畑の中を横切り香りをかいでも、小高い丘の上まで裸足で歩いて柔らかい草を踏みしめても、そこにあなたがいなければそれは地獄なのかもしれない。
天国と地獄
5/27/2023, 6:36:44 AM
「月が綺麗ですね」
あなたが私にそう言ってくれるならば。
私はひとり空を見上げる。アパートのドアに鍵をかけ、ふうと手に息を吹きかけて、近所の小さな公園に向かう。古びたベンチに腰掛けて、天を見上げる。
雲のかけらのない空に、しんと輝く満月を受けながら、着ているコートのポケットにあるカイロを握りしめる。かじかんだ指先がほんのりと温まった。
カイロではなく、あなたの手が私の指先に絡んでくれたならと。もう一度、となりにあなたがいて、ともに月を見上げてくれたなら。
そんなことを月に願ったこともあったけど、それが叶うなんてことは一生ないとわかってはいても。それでも、私は十五夜になると、その場所で空を見上げることをやめられないでいる。
月に願いを