11/11/2024, 3:37:57 PM
「質問です」
「はい、何でしょう」
「日本の歌にはときおり〝翼広げて〟とか〝手に入れた翼〟とか、そういった歌詞が出てきますよね」
「はい」
「この歌詞が指す〝翼〟とは、具体的に何ですか」
「そうですね。鳥も翼を二つもっていますし、飛行機の翼だって二つありますから。そうなると、腕や脚も含まれるのでは」
「じゃあ杖をつきながら歩いている僕は、ただの飛べない鳥?」
「杖をつきながらでも歩けている時点で飛んでいますね」
「先生の歩きが翼を広げた鳥なら、僕の歩きは翼の折れた鳥」
「だから折れてませんって。今もそうだ。先に進んでいる。ということは、翼があるということです」
「でも、僕に歩みを合わせてもらって申し訳ない……」
「いいんです。普段はせかせか歩いています。君と歩くときくらいは、ゆっくりと歩くぐらいでちょうどいいんです」
11/10/2024, 12:03:47 PM
月明かりがぼんやりと明るい。
吹き荒れる強風で、ススキの群生が波のように揺れている。立ち尽くすのは女の子の背中――。
……そんな夢を見た。
なんだったんだろう。眠たい目をこすりながら思う。
日本人にとってススキは、馴染み深さと同時に郷愁を誘う。
だから自分の脳みそが無意識に女の子を棒立ちさせたり、設定を嵐にしたり、夜にしたり……勝手なイメージを作り出したのはあると思う。それこそがススキがススキたるゆえんなので。
夢に出てきた女の子は、愁いの象徴のような植物であるススキに囲まれたていた。顔は見えない。まるで何かを決意しているようだった。