『エイプリルフール』
なん……?
ユサユサと、体を揺さぶられる不快感に目を開く。
「おはよ」
瞼を持ち上げたと同時に、上機嫌な彼女の声が弾んだ。
「……はよう、ざいます……」
朝からツラがいいな?
ピントが合わない視力でもわかるほどのきらめいた彼女の存在感に、眩しくてつい眉を寄せてしまう。
「ねえ。聞いて? 卵かけご飯にしようと思って卵割ったら、三つ子ちゃんだったの」
「三つ子?」
「そう。すごいでしょ。れーじくんにも見てほしくて起こしにきちゃった」
なんだそれ。
無邪気かよ。
かわいいな。
彼女の期待に応えようとのそのそと起き上がって眼鏡をかける。
ベッドサイドでちょこんと座っている彼女が視界に入った。
余程、三つ子の卵がうれしいのか、期待に満ちた眼差しで俺を見つめてくる。
やっぱり朝からツラがいい。
まんまるとした彼女の頭を撫でたあと、俺たちはキッチンへと向かった。
*
「じゃじゃーん」
キッチンの作業スペースに置かれた割れた生卵の入った小皿を、彼女は意気揚々と差し出した。
……え?
だが、小皿に入っていた卵は、三つ子どころか双子ですらない。
「こちらの子はひとりっ子に見えますが?」
「ふふん」
訝しむ俺を、彼女はイタズラが成功した子どものような満面の笑みを浮かべた。
「エイプリルフールでしたー!」
「エイプリ……。え、そういうのノる人でしたっけ?」
「去年スルーしたら、れーじくんが拗ねたんじゃん」
俺のせいかよ。
確かに、去年は彼女からのかわいらしいウソがないどころか、遠征に出るという悲しい現実を突きつけられた。
ウソを口実にイチャイチャちゅっちゅしたいという俺の目論見は叶わずに終わってしまい、彼女に八つ当たりをした記憶がある。
「満足した?」
「……全く」
彼女の純粋さもここまでくると暴力的にタチが悪い。
俺は大げさに首を横に振ってため息をついた。
「恋人とのエイプリルフールと言ったら、エッチな下着をつけるつけないでイチャコラするためのイベントでしょうが。俺の期待を好き勝手に弄んで、やり直してください」
「なにそれ。初耳なんだけど」
「去年、散々泣き喚いたついでに熱弁したはずなんですが、聞いてなかったんですね。お尻がリボンで解けるショーツとか、破る前提のスケスケの下着とか期待したのに残念です。そんなあなたもかわいいのですけど、俺の期待を弄ぶだけ弄んで、悪い子ですね?」
「え、ウソっ!? そんなの聞いてないっ!」
「はい。ウソです。言ってませんから」
「ほあっ!?」
「エイプリルフールなので」
雑なウソに悪びれることなくネタバラシをすれば、彼女の眉毛がプリプリと釣り上がる。
「変なウソつかないで!」
「それはお互い様でしょう」
意趣返しもすんだことだし、雑な朝飯を取ろうとした彼女の生卵を引き取った。
フライパンに火をかけて、熱が行き渡るまでの数秒間。
そのわずかな空き時間を使って、彼女の頬にキスをした。
「でも、俺の希望は伝えたので、来年こそはエッチなウソを期待してますね♡」
「んなあっ!? えええええっちな下着とか、は、恥ずかしくてむむむむむ、無理っ!」
「ははは」
ボンッと真っ赤に頬を染めながら、慌てて拒否を示す彼女の主張を笑って聞き流す。
冷蔵庫からウインナーを取り出して、彼女の代わりに朝食の準備を進めていった。
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いつもありがとうございます。
仕事が終わらず、殴り書きです。
ひっちゃかめっちゃかで読みにくくてすみません💦
こんな感じのエイプリルフールを書きたかったです、という方向性だけ……。
覚え書きついでに供養させていただきました。
せっかくですし、どこかのタイミングできちんと整えたいとは思っています。
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『幸せに』
いつもありがとうございます。
スペースのみです。
『何気ないふり』
いつもありがとうございます。
仕事が終わらないためスペースのみです😭
『ハッピーエンド』
彼女は乱読家ではあるが、好みはある。
自身で本を購入するときは、主に自己啓発本、小難しい専門書、近代文学作品、装丁が凝ったハードカバーの書籍を手に取ることが多かった。
近くの大型書店で手に入る範囲で洋書も好む。
そんなリアリストな彼女が、女児向けアニメを毎週録画しているだけでなく、毎年のようにシリーズ上映されているアニメ映画を観るために苦手な映画館に通おうと計画していたのだから驚きだ。
シリーズのマスコットキャラクター、ハムスターの見目をした妖精さん、ハムハムちゃんを推しているとはいえ、優しい世界と善人たちで成り立っている物語の沼にどっぷり浸っている。
ちなみに、映画館は照明の明るいキッズ向けシアターを狙っていたらしいが、大人のみでは入れないと知り、泣く泣く諦めたとのことだ。
「……映画館に入れなかった代わりに、特装版のパンフレットとぬいぐるみにアクスタですか」
「えへへ」
リビングのローテーブルに並べられた戦利品に、彼女はバツが悪そうに笑ってごまかされる。
ほかにも、食べもしないクセしてハムハムちゃんのポップコーンバケットやドリンクホルダー、ブラインドのミニフィギュアに缶バッチなど、金にものをいわせてなかなか派手に買い込んできた。
グッズを集めたい気持ちはわからなくいし、彼女がテンションに任せて勢いで物を買ってきたことに対して、とやかく言うつもりはない。
しかし、だ。
そのハムハムちゃんたちの配置について俺たちは少し揉めている。
「テレビの前にアクスタとミニフィギュアを置くのは反則では?」
「だ、だって本棚に収まらなくなっちゃって……」
彼女は3段式の小さな本棚のうち、2段もハムハムちゃんのエリアに拡張したが、収まりきらずテレビの前にハムハムちゃんとヒロインたちのアクリルスタンドを置いたのだ。
ハムハムちゃんにいたっては3体もミニフィギュアが鎮座している。
俺にはショーケースにキッチリ収めろ、作業部屋からグッズをはみ出させるなと要求したクセに。
元々の彼女のエリアが狭いから俺だって打診するつもりでいたが、だからってテレビの前はずるすぎる。
リビングの一番目立つところだぞっ!
俺だって置きたいっ!
「それなら俺もベッドボードに推しのアクスタ置きたいですし、寝室のカーテンも推しのカーテンに差し替えたいです」
「その推しって私だよな??」
「当然です」
「絶対ヤダ! なんでわざわざ自分の顔で1日を締めくくらなきゃいけないんだよ!? 冗談じゃないからな!?」
「その見た目で自己肯定感激低なの意味わかんないんですけど、どうなってんすか。自己肯定感の高さって実は身長に比例するんですか?」
「はぁあああ!? そっちの厚かましさのほうが身長に比例してんだろっ! どさくさに紛れてマグネットも作りやがって! 実用性兼ねてくるほうが卑怯だかな!? 寝室とか耐えられない! てかどんだけカーテン作ってるんだよ!? 自重しろっ!」
「してますよ」
「どこがっ!?」
「カーテンは年イチで我慢してます。そもそもあなたの魅力が青天井に更新されていくのが悪くないですか?」
「知らないよっ! 私はなんも悪くないっ!」
「それはそう! あなたのかわいいは正義です」
レスバトルの強い彼女にらちがあくはずもなく、俺は仕切り直すつもりで息を吐いた。
「本棚と同じ高さの収納棚とかどうです?この高さなら2重スライドできるタイプもあるみたいですよ?」
「んえっ?」
「テレビの前だけは譲れません。つーかその量はスペースを広げたほうがよくないですか?」
「い、いいの?」
「いいもなにも、元々あなたの荷物は少なすぎるくらいですし。もっとでかい収納棚にしますか? ハムハムちゃんはしばらく活躍するでしょうから、この先グッズも増えますし、どうせ円盤も揃えるつもりでしょう?」
「う、うん。でも、大きいのはいい……。サイズ、本棚と揃える」
「そうですか? 我慢しなくていいですよ?」
「おっきいハムハムちゃんのぬいを上に置きたい」
「あぁ、あれですか」
同棲前に、ハムハムちゃんの等身大ぬいぐるみを持ち帰ってきたことを思い出した。
「この棚の高さがちょうどいいの」
彼女の身長なら確かに、扱いやすい高さだろう。
再度、彼女の地雷を踏む勇気はなく、ここは黙っておいたほうが得策だ。
「まぁ、あなたがそう言うなら。色は白で揃えます?」
「うんっ」
上機嫌に揺れる彼女の頭を撫で、収納棚の購入ボタンをポチッと押す。
ハムハムちゃんの置き場をめぐったいさかいは、これでなんとかおさまったのだった。
『見つめられると』
いつもありがとうございます。
スペースのみです💦