列車に乗って旅をする。
宛先もない長い旅。
揺れる体に悩める心。
終着点はどこなのか。
列車に乗って
最悪、反対方面のバスへ乗ってしまった。
適当なところで降りようにももうICカードをタッチしてしまった。こうなれば開き直ってバスに居座ろう、少しのドライブだと思うことにした。
バスに乗っているのは私だけで貸切状態だった。1番後ろの席に座ったこともありバスはとても広く感じた。
バスに揺られて遠くの知らない街まで来てしまった。ここはどこだろう?散策してみる。
商店街に入ってみると小さな駄菓子屋さんや古ぼけたゲームセンターがある。その一角に古本屋があった。
店に入ってみると初老の男性が店番をしていた。店には誰もいない。適当に本を取ってみてはパラパラとめくる。紙がめくられる音だけが店を支配する。店に並んでいるのはどれも古い本ばかりで惹かれるものはなかった。
ふと、カラフルな色使いの絵本が目に止まった。見覚えがあるものだ。どこで見たんだろう?
記憶と探ってみると思い出した。昔、祖母が読み聞かせをしてくれた絵本だ。懐かしいな。
パラパラとめくると懐かしい記憶が蘇ってくるようだった。
絵本を買って店を出た。たまにはこんなこともあっていいかもしれない。
遠い街での出会い、そう悪くない気がした。
遠い街へ
嫌だな何もかも嫌だ。
周囲の目線、それを異常に気にしてしまう私。
募る劣等感、嫉妬。
虚しいばかり。
女子校なんて右ならえの精神で出来ているようなものだ。隣の人は私なんかが右で可哀想だなぁ。
だってあの子もやってるから。みんなやってる。
聞き飽きた台詞だった。主体性の欠片もないことを喚いている一軍たち。それに憧れている私もまた惨めだな。
頭を冷やすため、兎に角他のことに集中するため適当に活字を追う。現実逃避は簡単だけど繰り返すたびに辛さがのしかかってくる。私はいつになったら楽になれるんだ。
現実逃避
君は今何をしているだろう。
僕はと言うと親戚の気に入らないおじさんから貰った酒を開けている。上等な酒だと言っていたけど果たしてどうなのだろう、怪しいものだ。
君はあっちで幸せにやっていってるんだろうか。やっていってるといいな。
ひまわりが良く似合う君はいつも笑顔を浮かべていた。なのになんだあの様は。
「君にはあんな花、似合わないな。」
白い菊に囲まれた君の姿を思い出し思わずそう呟きそうになる。その言葉を飲み込むようにグイッと酒をあおる。はぁ苦いな。
ひとりぼっちで過ごすには長い夜だった。
君は今
青木くんは少し変わった子だった。
青木という名前なのにとにかく赤いものしか持っておらずみんなからは赤木くんと呼ばれていた。でも僕は赤を見ていると目がチカチカするようで赤が苦手だったから青木くんと呼んでいた。
授業中の青木くんはそれはもう見応えがあった。青木くんは授業を聞くなんてことする暇があるならもっとマシなことするよ!と言っていたぐらい勉強が嫌いだ。なのにいつも中の中ぐらいの成績を取っているのだからすごい。
青木くんは授業中いつも工作をしている。今日は折り紙で鶴を折っていた。だれか病気なのかな。
次の日青木くんは初めて学校に青い服できた。いつも笑みを浮かべている青木くんの顔は暗い。予報では快晴だった空も暗く沈んでいるようだった。
青木くんはその日早退した。クラスのみんなはいつもあんなに元気な赤木が…とか今日は服青かったけど何かあったのかなとか青木くんの話で持ち切りだった。
昨日折っていた折り鶴、何か関係があるのだろうか。
今日の青木くんの顔が忘れられなかった。
物憂げな空