「失恋した」って、あなたを見ていると思ってしまう。
告白すらしていないのに、見ただけで分かってしまう。
あなたの目に映っているのは私じゃないって。
きっと、告白してちゃんと振られればこんな気持ちにならずに済んだ。
だけど、振られるのを分かっていて告白する気にはなれない。
弱い私が悪いのか、はたまた、あからさまに態度に出すあなたが悪いのか。
答えなんて分かっているはずなのに、ずっと追い求めてしまう。
そんな女々しい、17の夏だった。
梅雨になって傘を差すと、傘に守られているような気分になる。
傘は私にとっての友達で、私のことを必死に守り抜こうとしてくれる。
だけど私はそれがとてつもなく嫌だった。
自分が守られてばかりなんて、そんなの不公平だと思ったからだ。
だから私は梅雨でも傘を差さない。
濡れてることなんてどうだっていい。
むしろ気分がいい。
傘もこんな気持ちだったのかと思うと、なんだか申し訳なく思ってしまう。
けど、絶対譲れない私のポジション。
…とらないでね。
「ごめんね」
それが私の口癖であり、一番嫌いな言葉でもあった。
人が少しでも怒っていそうな素振りを見せたら悪いことなんてしてないのに「ごめんね」。
人に優しくしてもらっても、「ごめんね、ありがとう」。
一人になった時でも、「ごめん…ごめんね」と独り言。
結局自分がなにをしたいのかなんて分かりもしない。
分かりたくもない。
ただ、こんな自分が醜いってことだけは、明確に分かってしまう。
だから…「ごめんね」。
好きな人の腕にある、剃り残しの毛。
思っていたよりもあった筋肉。
所々にある小さなホクロ。
少し赤くなった虫刺されの跡。
全部、半袖だから気付けた。
けどまさか、こんなことで胸が締め付けられるほどキュンとくるなんて、思いもしなかった。
全部、半袖のせいだ。
透明な水は透明なのに、目に見える。
実際は微妙な青色をしていると聞いたことがあるけど、ならどうして透明だなんて曖昧な表現をしたんだろう。
確かにあれは、絶対に青色じゃない。
だけど透明でもない。
水には色がない。
だから存在しない色の、透明にしたのかもしれない。
いつか、水にちゃんとした色の名前がつくといいなって、少しだけだけど願ってる。