自分の世界を作るという課題が美術の時間に出た。
みんな楽勝と言わんばかりの顔をして筆を進める。
そんな中、私は描いているふりをしてぼーっとしていた。
何も描けないのだ。
自分の世界なんて考えたこともない。
色なんてない。景色なんてない。何もない。
結局、私はこの課題をクリアすることが出来なかった。
けど、先生はクスリと笑ってこう答えた。
『無色の世界…貴方らしいわね』
なんだか、とても恥ずかしい気持ちになった。
ずっと、考えていたことがあった。
もし、私がここではない、どこかで生まれたのなら…私はどうなっていたんだろうって。
もっとお金持ちの家に生まれれば我儘に。
もっと平和な家に生まれれば優しく。
もっと、もっと…ってずっと考える。
考えて考えて、今の現状に嫌気がさして。
無意味な妄想の繰り返し。
なんとなくたどり着いた山。
綺麗な高台の上で、私は遠くの空へ向かって叫んだ。
死にたいと。
死にたいという綺麗なやまびこが跳ね返る。
5回…7回…と、どんどん薄れていく私の声は最後に何かを言っていた気がした…。
それはきっと、私が一番聞きたくないセリフ。
さて、なんだか分かりますか?
言葉にできない辛さは、きっとあなたに伝わらない。
喉奥が焼けるように熱くて言葉を燃やしてしまう。
そのせいで私の言いたかった言葉は灰になって、そのまま胃袋に溜まってゆく。
どんどん…どんどん溜まってゆくそれを出す手段なんて見つからなくて、私は真っ黒になってしまった。
そんなこと、あなたは知らない。
だけどあなたも私の知らないところで…いや、そんなわけないか…。
春爛漫…花がどんどん散ってゆく。
ふと手に乗った花びらは少し冷たくて。
死んだんだ…って思った。
ほとんど全員、死んでいた。
だけどお墓みたいな不気味さはなかった。
逆にすごく暖かくて、なんなら私も仲間に入れてもらいたいくらいだ。
けど…私はこんなに綺麗には舞えないんだろうな…。