純粋に君を愛していた。
だから君に会いたくて、たくさん無理をした。
たくさんお金もかけた。
それなのに君は僕を無視する。
僕だけが苦しむなんて、そんなの不公平だろ?
許せないだろ?おかしいよな?
だから…
今度は君が苦しむ番だよ。
ほろ苦くて真っ黒な私の過去を紙の上に並べる。
どれも二度と見たくないくらいに残酷で、思い出したくもない。
だから二度と見なくて済むように、鍵付きの日記を焼却炉にぶち込んだ。
これで私の過去が消えたとは思わない。
だけどこの過去を知っているのは私と、この閉ざされた日記だけ。
それがなんとなく、友達ができたみたいで嬉しかった。
冬の寒い時期になると、専業主婦である母の手は自然と荒れてきてしまう。
そんな母に弟は、ガサガサしていて汚い手だと言った。
怒ってやろうと思った。
だけどなんて言ったら良いのか分からなくて、私はただ黙っていた。
すると父が母の手を握って
「これは働き者の綺麗な手なんだ。
お母さんはどんな人よりも美しいよ」
と言った。
私はなんて美しい夫婦なんだろうと涙が溢れた。
この世界は、見栄で溢れている。
優しい人は、人に優しくしている自分が好きで、そこに自分の人間としての価値を見出している。
逆に厳しい人は、人に厳しくすることで自分の存在をアピールして、自分の威厳を保っている。
そして私も、人に認められる為に嘘をついて、自分の弱さを隠す為に笑ってる。
人間、みんな種類は違くても、結局は見栄っ張り。
どうせ、そんなもん。
どうして人は人を傷つけるの?
幼い頃に、父にそう聞いたことがある。
私の不躾な質問に、父は迷うことなくこう答えた。
人を傷つけていないと、自分を保てない。
それに傷つけるつもりがなくても、価値観の違いで相手を知らないうちに傷つけることもある。
仕方のないことなんだよ。
…と。
私は何を言っているのか分からなかった。
だけど今なら分かる。
だって、私もそうだから。