どうして人は人を傷つけるの?
幼い頃に、父にそう聞いたことがある。
私の不躾な質問に、父は迷うことなくこう答えた。
人を傷つけていないと、自分を保てない。
それに傷つけるつもりがなくても、価値観の違いで相手を知らないうちに傷つけることもある。
仕方のないことなんだよ。
…と。
私は何を言っているのか分からなかった。
だけど今なら分かる。
だって、私もそうだから。
私には夢がある。
保育士という小さな夢が。
だけど最近、少子高齢化が進んだせいで保育士の将来性は見込めず、やる人が沢山いるからか給料も少ない。
そして本気で子供を愛し、仕事に取り組む人が減っていっているとニュースを見ていても思う。
そんな保育士にはなりたくない。
だけど、もし自分が保育士になったら自然とそうなってしまうのかもしれない。
だから…ずっとこのまま純粋に夢を追うことは…出来ないかもしれない。
いつも通りの帰り道。
もう隣で笑い合うこともないであろう友人を忘れるために、一人歩く。
今までタンタンとしていた足音も、一人で歩くとトボトボしてしまう。
服では隠しきれない肌を、冷たい風が刺す。
痛いし、苦しいし、寂しい。
この寒さが身に染みて、やっと友人の大切さが分かった。
…もう、遅いけどね。
私は早く20歳…いや、大人になりたかった。
大人になれば今よりもっと幸せで、お金も自分で稼いで自立する…つまりは自由になれると思っていた。
だけど最近、分かってきた。
大人になれば、確かにお金は自由に使えるけど、一人で使っても全然嬉しくなんかないんだ。
ただ減っていくお金に絶望して、働かないとなんて自分を縛りつけて…そんなことの何が自由なんだろう。
だから私は大人になんてなりたくない。
三日月は欠けている。
当たり前のことだけど、私はそれを美しいと思った。
普通はなにかが欠けていたらダメになるのに、三日月はそれを逆手にとって、さらに美しく輝いている。
私も三日月のように、何かがダメでも周りから綺麗だと言われたい。
私も三日月のように、何かがダメでもそれでいいと言ってもらいたい。
そう思ってしまうのは…ワガママなのかな?