私にとっての幸せは、お金があることだった。
だけど最近、本当にお金だけが全てなのかと考える日が多々ある。
だって、お金があっても幸せじゃない人なんてたくさんいるから。
だからといって、貧乏だから幸せってわけでもない。
つまりは普通が一番良いってことなんだろうなって。
けど普通は普通で、それなりに大変だってなんとなく知っているから。
じゃあ…本当の幸せとは?
1年間を振り返ると、ろくなことが無かった。
好きな人は違うクラスにいっちゃうし、担任だって嫌いな人になった。
それに、友達とも喧嘩したまま。
家族の仲も微妙だし、来年は受験。
不安で不安でしょうがなかった1年だった。
だけどなんでかな…戻りたいなんて思ってしまう。
それが悔しくて、涙が出た。
ある日の朝、汚い手ぶくろを拾った。
片方しかないし、そこらじゅう穴だらけで使い物にならないのに、なんとなく拾ってしまった。
手ぶくろはあまり好きではない。
ないよりはマシだけど、そんなにあったかくもならないし、付ける手ぶくろでセンスがバレてしまうから。
だけど私は、この汚い手ぶくろを手にはめた。
とても冷たかったけど、目の当たりがなんとなくあったかくて、不思議と心まであったかくなった気がした。
だから私は手ぶくろを元あった場所に戻した。
イブの夜に夢を見た。
自分がサンタ見習いになる、ありえない夢。
最初はワクワクした。
自分なんかが子どもたちの幸せの手助けを出来るなんて光栄だとも思った。
だけど現実は残酷で、子どもたちの喜んでる顔なんて一回も見れなかったし、泥棒扱いもされた。
けど本物のサンタさんはそれでいいと微笑んでいた。
私はサンタさんになれないなって、そう思った夜だった。
私の母はゆずが大好きだった。
基本的に料理にはゆずを入れていたし、自分で作ったりもしていた。
私はゆずの独特な味が嫌いだったから疑問に思って、母に聞いてみた。
そしたら、「ゆずの香りが好きなの」って切なそうな顔して言うもんだから、私は察した。
きっと随分前に亡くなった父が関連しているんだろうと。
理由は聞かなかった。いや、聞けなかった。
けど、私もゆずの香りを愛そうと思った。