あなたとわたしは全然違う。
あなたと違って、私には誇れるような才能がない。
けど、私には自慢の家族がいる。
優しくて温かくて、帰る場所を与えてくれる、私の唯一の家族。
私が自分の命を投げ打ってでも大切にしたい宝物。
家族が大嫌いで縁を切っているあなたとは違う。
ほらね?やっぱり…
あなたとわたしは全然違う。
柔らかい雨が私を刺した。
じんわりとした優しい痛みが身体中を駆け巡る。
自然と涙が溢れたのは、きっと嬉しかったから。
こんなにも幸せな痛みがこの世にあったなんて、あなたと出会わなかったら知ることもできなかった。
『ありがとう…っ』
涙を堪えながらの精一杯の笑顔。
あなたの目にはどう映ったのかな…。
将来が見えない、ダメダメな私。
普通の幸せを手に入れたいとは思っていても、そのために何をしたらいいのか分からない。
お金持ちと結婚できたら幸せ?
可愛い子どもがたくさんいたら幸せ?
そんなこと、学校では誰も教えてくれないから分からないよ。
ねぇ…私の真っ暗な未来に、一筋の光を差し込んでくれる人はいるの?
いるんだったら早く現れてよ…。
鏡の中の自分に話しかけた。
『あなたは誰?』
鏡の中の自分が言った。
「俺はお前。
…けど、お前に殺された。」
苦しそうに顔を歪ませるあなた。
それにイラッとして、鏡を思い切り殴った。
『仕方ないでしょ!?これが本来の正しい私なの!!
あんたなんて…最初から居なければ良かったのに…!』
「…ごめん」
その日から、あなたは現れなくなった。
眠りにつく前に、私はいつも今日を思い出す。
あの時ああしとけば良かった…なんて、考えてもしょうがないって分かってるのに。
毎日毎日、思い出してしまう。
そして明日が怖くなる。
このまま寝て起きてしまったら、またあの地獄のような場所に行って、偽りだらけの私にならないといけない。
だから朝は嫌いだ。昼も嫌いだ。夕方も嫌いだ。
そして何より、こんなことを考えさせてくる夜が、一番大嫌いだ。