私はこの世界に生まれたくなかった。
ううん、生まれちゃいけなかった。
私は今まで、どれだけの人を傷付けた?
どれだけのものを、簡単に壊した?
蟻の命ですら大切に思えない私が、この世界にいてもいいの…?
ううん、いいわけがない。
だから…お願いです神様。これ以上この世界を汚くしないように、私は消えるから。だから…だから…。
永遠に、生まれ変わりませんように。
誰もいない場所にいきたい。
これ以上、汚い私でいたくない。
だから、優しい雨が降る場所に行って、そっと、誰の目にも触れずに死にたい。
そしたら、次こそは綺麗な私になれると思うから。
…けど、これは私の理想郷。
理想でしかないから…叶わないの。
いつもと同じ景色。
変わらない空気の匂い。
ただ違うのは、それを見ている私。
昔の私は私であって、私じゃない。
背丈はもちろん、見た目も声も考えも、何もかもが違う。
空を見て「きれいだな〜」と笑顔になれていた頃の私はもういない。
「綺麗だな…」とは思えても、なんとなく虚しくなって、自然と涙が溢れる。
昔の自分を懐かしく思うことができるのは成長したから。
良いことだけど、私はそれが怖い。
だから私は、未だに空を見れていない。
ピノ恋というゲームをしていて、気付いたことがある。
それは、選ぶ選択肢によって物語は大きく変わるということだ。
「当たり前じゃん。だからなに?」
と言われたらそれまでだが、私は自分の人生も行動次第では大きく変わるんじゃないか、と少し生きる勇気が湧いてきた。
全部が全部、悪い方向に進むわけじゃない。
傷付いて死にたくなっても、私たちにはもう一つの物語…、いや複数もの数え切れない物語がある。
だから私は、ベストエンドを目指して生きるんだ。
暗がりの中で声がした。
なんて言っているのかは分からない。
けど、なんとなく分かる。
あれは私の声だ。
少しだけ震えている声。
何かに怯えているということは明らかだった。
けど、私にはどうにも出来ない。
だから今日も見て見ぬ振りをした。