いつもと同じ景色。
変わらない空気の匂い。
ただ違うのは、それを見ている私。
昔の私は私であって、私じゃない。
背丈はもちろん、見た目も声も考えも、何もかもが違う。
空を見て「きれいだな〜」と笑顔になれていた頃の私はもういない。
「綺麗だな…」とは思えても、なんとなく虚しくなって、自然と涙が溢れる。
昔の自分を懐かしく思うことができるのは成長したから。
良いことだけど、私はそれが怖い。
だから私は、未だに空を見れていない。
ピノ恋というゲームをしていて、気付いたことがある。
それは、選ぶ選択肢によって物語は大きく変わるということだ。
「当たり前じゃん。だからなに?」
と言われたらそれまでだが、私は自分の人生も行動次第では大きく変わるんじゃないか、と少し生きる勇気が湧いてきた。
全部が全部、悪い方向に進むわけじゃない。
傷付いて死にたくなっても、私たちにはもう一つの物語…、いや複数もの数え切れない物語がある。
だから私は、ベストエンドを目指して生きるんだ。
暗がりの中で声がした。
なんて言っているのかは分からない。
けど、なんとなく分かる。
あれは私の声だ。
少しだけ震えている声。
何かに怯えているということは明らかだった。
けど、私にはどうにも出来ない。
だから今日も見て見ぬ振りをした。
あなたが淹れてくれる紅茶が好きだった。
なんとなく違和感を覚える味だったし、普通の紅茶の香りとは違う、変な匂いがしたけど、”私のために”と不器用ながらも一生懸命紅茶を淹れてくれるあなたの優しさが大好きだった。
…でも、あんなクセのある紅茶を毎日飲んでいたせいかな。
もう、自分で淹れる紅茶じゃ満足できないんだ。
きっとこれから一生かかっても満足なんかできない。
だから私は、紅茶を淹れるためのティーポットを捨てた。
『るてしいあ』
これは私たちの愛言葉だった。
愛言葉って言っても、あいしてるを逆から読んだだけ。
それでも、私にとっては特別で、大切なものだった。
だから今、貴方が愛言葉を言ってくれなくなった事がとても悲しいの。
どうしたら私の声が届くの?
どうしたら貴方の心は取り戻せるの?
ねぇ…。
『…あいしてる』