セーター
──ホーホケキョホーホケキョ
カーテンの隙間から差し込む光と
聞き慣れない鳥のさえずりで
ふと目が覚めた。
「んー…よく寝た。もうこんな季節かぁ」
朝から多く走ってる車
遠くから聴こえるウグイスの鳴き声
窓から眺めていては増えていく人々。
今日は気温は低いけど日差しが暖かい。
10年ぶりに会う約束をしたお友達と
ちょっと小さいけれどお洒落な店へ
手作りのスイーツを買いに行く。
遠足に行く前日の子供のように
どこに行こうか?何を着ていこうか?
とワクワクな気持ちと10年ぶりに
お友達と会うのでちょっぴり不安もある。
この日に着ようと決めていた
私の大好きな色、薄ピンク色のセーターと
丁寧に三つ編みしてから
ポニーテールと組み合わせて、
日が差しているのでお気に入りの帽子。
10年前のアルバムを眺めながらコーヒーを飲んでは
どんな大人になったのか期待を膨らませ
小走りで玄関を出た。
切符を購入しバスに乗り
待ち合わせ場所に移動する。
待ち合わせ場所に着き、
久しぶりにお友達と顔を合わせた私。
「ゆーちゃん久しぶり!
え、もしかして……笑?」
私とお友達は声に出して笑った。
だって、本当に仲良しだと思えたから。
──このセーターは二人のお気に入り。
何年経ってもこの思い出は
ずっとずっと心に残り続ける。
落ちていく.1
───辛いよ、苦しいよ、、
生きていれば悩みは数えきれないほどに
どんどん大きくなっていく。
普段はいつものように笑ったり騒いだりするけれど
陰で泣いたりイライラしたりもする。
どれだけ頑張っていても
結果が悪ければ見下される。
逆に結果が良ければ
期待でプレッシャーが大きくなる。
悩みから抜け出すのは難しい、
長く頑張り続けるのも根性が要る。
1年、10年と何年も繰り返し努力したら
なんて馬鹿みたいな考えだけれど
でも実際に報われた人達がいる。
きっと、、きっと大丈夫だよ。
頑張らないと、やらないとって
無理して考えなくてもいい。
その人達を思いながら
今日も一日を過ごしていく──。
落ちていく.2
────ゆらりゆらり…。
もう十分 十分だよ。
貴方は掠れた声で呟く…
世界一大切なのに
生きる理由なのに
僕は何をしてあげれたら
君はもっと幸せだった?
───その灯火がふっと消えた。
僕の瞳から涙が零れ
君の頬に溶けた。
ゆっくりゆっくりと
深い眠りに落ちていく。
夫婦
何一つ変わらない日々に暖かい日差しに包まれながら
昼寝から目覚め古い動物の物語の本を読んでいた。
「はぁ…私もあの犬みたいになりたい」
落ち着いた雰囲気に家の庭で駆け回ってる犬を
眺めながら奥さんが呟く。
不安そうにしている奥さんを見かねた執事。
「安心なさってください
予定通りなら今日の夕方に帰ってきますよ」
三時のおやつを手に優しく低めな甘い声。
少し固めのスポンジにふわふわのクリーム、
採れたての甘酸っぱい果物に
ミントの葉を添えたケーキ。
食べ終わる頃に帰ってくると期待を膨らませながら
お気に入りのケーキを小さい口に含んだ。
甘くて美味しくて…まるで気持ちがとろけるような
おかわりしたくなるけれど我慢と幸せな時間。
終いに奥さん好みの温度
深い味わいの甘さ控えめな紅茶。
1口ずつ丁寧に味わうように
ティーカップに口をつけた時…。
────ガチャ。
鍵が開いた音。
私は早歩きで階段を下り涙がこぼれそうになるのを堪え
にっこりと笑顔で迎えた。
「おかえりなさい…!」
毎日変わらない日課だけれど
その声はとても幸せそうで
そんな2人を眺めながら静かに階段を下りる執事。
空はほんのり赤色に染まり溢れそうな光
私はあの空と同じような顔をしてるかもしれない。