「ありがとう、ごめんね」
ありがとう、君が見せてくれた世界の広さ。
本の中に、言葉の中に、未知が詰まっていた。
ごめんね、知識を追いかけるばかりで、
君の声を聞き逃してしまった日々。
ありがとう、ごめんね。
君がいなければ、私の世界はもっと狭かった。
でも君と一緒に、まだその先を見たいんだ。
「部屋の片隅で」
部屋の片隅で見つけた
少し欠けた写真立て
笑っているのは、
まだ未来を知らない自分たち
埃を払うと、
手に付く細かな粉が
過ぎた時間の重さを語る
部屋の片隅には、
戻らない日々の残響が眠っている
触れれば温かくて、
けれど少し冷たい
あの日の自分に何か伝えるなら
「そのままでいいよ」って言うだろうか
それとも、ただ黙って頷くだけか
片隅でひとり思い出す
過去も未来も混ざり合うこの瞬間
写真を戻し、また時を重ねる
「逆さま」
逆さまにしたら、
世界の音が変わり、
空は足元に広がり、
地面は遠くの空に漂う。
まるで夢の中にいるようで、
それが現実だと知っているから不思議だ。
涙も笑顔も逆さまに流れ、
思い出が逆転して映る。
あの日の言葉も、
今の心の声も、
すべてが反転して、
新しい形に生まれ変わっていく。
逆さまでも、
少し違うだけで、
何もかもが新しく見える。
失ったものも、
その向きを変えたら
手のひらの中に戻ってきそうで、
希望が見え隠れする。
逆さまにしたって、
それでも私は私。
どんな角度でも、
心はまっすぐに前を向いている。
「眠れないほど」
眠れない。
布団の中で小さな葛藤が始まる。
羊を数えるべきか、いや、もう羊も疲れてるだろう。
瞼を閉じても、脳内会議は全員手を挙げて賛成してくれない。
寝る。寝るべきだ。
でもさっき思い出したあの恥ずかしい瞬間、
「あの時なんであんなこと言っちゃったんだ?」
とか再放送が始まる。深夜枠で特別編だ。
考えるな。リラックスだ。
でもどうせ明日の朝、寝不足の自分に説教される。
「昨日何してたんだよ?」って。
ああ、眠れないほど面白い自分の脳内劇場に拍手喝采を送りながら、
夜は静かに、でも賑やかに更けていく。
「夢と現実」
夢の中では、空を飛んで
何もかもが自由で、重力なんて気にしない
足元はふわふわ、どこまでも行ける気がして
あなたの声が風に乗って、耳に届く
でも現実では、足元はしっかり地面について
歩くたびに感じる重さが、
私を引き戻して、時々「これでいいのかな?」って
考えさせられることがある
夢の中では、時間も急かさず
ゆっくりと流れて、何もかもがうまくいく
でも現実では、時計の針が進むたびに
焦りが募って、気づけばもう遅い気がして
夢では、全てが手のひらの中にあって
何をしても、後悔なんてない
でも現実では、何度も同じ場所をぐるぐる回って
本当にやりたかったことが見えないまま
それでも、夢を追いかける気持ちは捨てずに
現実の中で少しずつ、歩みを進めようと思う
だって、夢の中で見た光景が
きっと現実に変わる瞬間を信じているから