【これで最後】

「これで最後だから」

かすかに笑みを浮かべながら近づいてくる。
いや、嗤っている。

それに気づきながら逃げない自分も自分なのだけれど。

「そうだよね」

名残惜しさすら感じている。
私のことだけを考えていて、私だけを見てくれるこの瞬間が大好きだ。
手放したくないと思ってしまう。

「しんどかったら休んでね」

「つらかったら無理して来なくていいんだよ」

「いつでも相談してね」

「泣けるときに泣いていいんだよ」

逃げ方は教えてくれるのに
立ち向かい方は教えてくれないんだね

無力なんだ、ずっと

我慢してたらいい子？
笑ってるのがいい子？

そんなの、いらない
返してよ、私の心

【まって】

ドンと指先に衝撃が走ったのと

手を出したことを後悔したのが同時だった。

「待って」

その言葉も届かない。


突き指だった。

【まだ知らない世界】

見えている世界は、きっと狭くて小さくて。

両手で抱きしめられないほど広くて。

見渡せないほど遠くて。

それが怖くてたまらない。

【光輝け、暗闇で】

あたりが真っ暗に見える。

誰もが味方がいないように。

足元がぐらぐら揺れる。

出て行けと責め立てるように。


それでも、スポットライトが灯っている場所があった。

そこに向かって走る。

日の当たる場所で光るために。