シンビジウム

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3/31/2025, 10:01:46 AM

【春風とともに】

ぶらんこを漕ぐ。

こんなに疲れるものだったっけ、と。

地面との距離が遠くなって、空が近くなる。

ちょっと怖くなった。

不規則な揺れがちょっと気持ち悪い。

毎日ぶらんこを漕いでいた頃が、懐かしかった。

3/29/2025, 9:56:40 AM

【小さな幸せ】

息が止まりそうに荒くなって、苦しさで視界が滲む。
喉が熱くなってほろりと涙がこぼれる。
自分の涙を見ないように、顔を上に向けた。

「…大丈夫」

自分が落ち着くいつもの言葉。
それでもしんどくて、いくつも涙が落ちていった。

空中をつかむ。
手に入れたいものを全部取り落としている気がしていた。
                       fin.

3/27/2025, 9:59:59 AM

【七色】

七色に混ざれない色は、どうなるのだろう。

無数に色は存在する。

彩度が高い色から、低い色まで。

明度が高い色まで、低い色まで。

無数に存在するのに。

初めからないみたいに扱われる。

3/26/2025, 10:01:14 AM

【記憶】

一回目は記憶がなかった。

二回目は少し周りを見れるようになった。

三回目は今まで見たことのないものを見た。

四回目は自分史上最高だった。

まだ、頂点には立てない。

3/25/2025, 9:36:26 AM

【もう二度と】

「もう二度と、出られないんですよね」
「出れないわけじゃないけどね」

嬉しいことのはずなのに、ひどく悔しそうな顔だった。

「楽しかったね」
「楽しかったです、ほんとに」

楽しそうに笑っていた姿が印象的だった。

「あなたすごい楽しそうだったね」
「最高でしたよ」

隣の彼は、緊張も感じていないようだった。
羨ましいと思う反面、頼もしかった。

「解放されたって思うんですかね、みんなは」
「そうだろうね」

遠い夢に向かっているのか、追いかけられているのか。
毎年わからなくなる。

「今年も、ありがとうございました。僕のわがままに付き合ってもらって」
「こちらこそありがとう」

彼と一緒にやってきてよかった、と強く思った。
                       fin.

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