【bye bye…】
さよならが多いこの時期。
上手くさよならを言うのが苦手だ。
自分のことなんてと思って、さよならを言えなくなる。
大好きだった部活の先輩。
「ご卒業おめでとうございます」も言えずに、教室を眺めた。
最後に見たのは、卒業式の行進。
少し涙ぐんで歩く姿に、もらい泣きしそうになった。
また会えたらいいけど。
幸せに生きてたらいいけど。
大好きでしたよ、先輩。
【君と見た景色】
「ほんとに、いいんですか」
「いいよ。出たいなら、出ようよ」
「納得できる勝ち方じゃなかったんです」
無意識に言葉が零れた。
今まで封印していた気持ち。
でも、耐えられなかった。
まだまだ若く、実績もない僕たちが勝っていいわけなかった。
「じゃあ出よう」
「出ます。…でも、これが最後」
「わかった」
やっと決断できた。
目標が決まれば、それを達成する道筋が見える。
あとはその道を走り続けるだけ。
勝てなくてもいい。
報われなくてもいい。
それでもいいから、去年の僕たちよりふさわしい人達が頂点に立ってほしい。
そして、僕たちも頂点に立てるような人物になって見せる。
そう気持ちを新たにして、前を向いた。
fin.
【手を繋いで】
ふわりと柔らかく笑う姿が忘れられなかった。
「好きです」
空気に溶ける。
手を繋ぐことすらできなかった。
キスなんてなおさら。
あーあ、時間が流れる。
【どこ?】
「教科書読んで」
先生から告げられたページを探す。
「どこ?」
隣の女の子に尋ねると、
「ここだよ」
とすぐに教えてくれた。
慌てて「ありがとう」も言えなかったけど嬉しかった。
あの子を思い出すと、いまだにその思い出がよみがえる。
少し茶色がかった髪の毛。
友達と話すときのはしゃいだ高い声。
ずっとあの子の視界に入りたかった。
【大好き】
自分の大好きが軽くなっていることに気づいていた。
4年前から好きな推しにも
1年前から好きな推しにも
3ヶ月前から好きな推しにも
担任の先生にも
卒業していく先輩にも
目に入った可愛い子にも
誰に発する「大好き」もほぼ同じ温度で怖くなった。
自分の「大好き」が信じられなくなった。