【君と見た景色】
「ほんとに、いいんですか」
「いいよ。出たいなら、出ようよ」
「納得できる勝ち方じゃなかったんです」
無意識に言葉が零れた。
今まで封印していた気持ち。
でも、耐えられなかった。
まだまだ若く、実績もない僕たちが勝っていいわけなかった。
「じゃあ出よう」
「出ます。…でも、これが最後」
「わかった」
やっと決断できた。
目標が決まれば、それを達成する道筋が見える。
あとはその道を走り続けるだけ。
勝てなくてもいい。
報われなくてもいい。
それでもいいから、去年の僕たちよりふさわしい人達が頂点に立ってほしい。
そして、僕たちも頂点に立てるような人物になって見せる。
そう気持ちを新たにして、前を向いた。
fin.
【手を繋いで】
ふわりと柔らかく笑う姿が忘れられなかった。
「好きです」
空気に溶ける。
手を繋ぐことすらできなかった。
キスなんてなおさら。
あーあ、時間が流れる。
【どこ?】
「教科書読んで」
先生から告げられたページを探す。
「どこ?」
隣の女の子に尋ねると、
「ここだよ」
とすぐに教えてくれた。
慌てて「ありがとう」も言えなかったけど嬉しかった。
あの子を思い出すと、いまだにその思い出がよみがえる。
少し茶色がかった髪の毛。
友達と話すときのはしゃいだ高い声。
ずっとあの子の視界に入りたかった。
【大好き】
自分の大好きが軽くなっていることに気づいていた。
4年前から好きな推しにも
1年前から好きな推しにも
3ヶ月前から好きな推しにも
担任の先生にも
卒業していく先輩にも
目に入った可愛い子にも
誰に発する「大好き」もほぼ同じ温度で怖くなった。
自分の「大好き」が信じられなくなった。
【叶わぬ夢】
叶わぬ夢を追いかける。
"叶わぬ"なんて決めつけてしまうほど、現実味のない夢だとはわかっていた。
それでもがんばり続けられずにはいられないほど、
その夢に魅了されていた。
それに没頭できるのも学生の特権のような気がする。
大人になりたくない。