シンビジウム

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2/21/2025, 10:00:19 AM

【ひそかな想い】

好きだって言わなかった。

いや、きっと言えなかった。

彼女に振られたって、傷ついた笑みを浮かべてるのに言えるわけなかった。

僕だったら、なんて本気でマンガみたいなことまでよぎった。

でも、自分に自信はないし。

同じ気持ちの保証は一ミリもない。

立ちはだかる壁が高すぎた。

このとき。
僕が何かできてたら、未来は変わったのかもしれない。
                       fin.

2/20/2025, 9:53:53 AM

【あなたは誰】

見覚えのある男の顔と目が合った。

ただただ嫌な予感がする。

目がそらせない。

手に力が入る。

生唾を飲み込む。

逃げたいのに、足がすくむ。

金縛りのように、全身が動かない。

いつまでこのままなのか。

思考が凍りつきそうになったころ。

にやり、と男の口角が上がって、膝から崩れ落ちた。

何が起きたかすら分からず、まばたきだけ繰り返す。

こちらに向かってくる足音に、身体がガタガタ震え始める。

トン、と靴が視界に入ったのを合図にして、抗いようのない恐怖の海に沈んでいった。

「…あーあ、残念。もうちょっと、だったのに」

                       fin.

2/18/2025, 9:34:30 AM

【輝き】

輝きが見出だせなくなったのはいつからだろうか。

きらきら光る街に、どこかどす黒い闇を感じるように
なって煌めきを感じなくなった。

新しいことに恐怖しか感じなくなって、避けることが
多くなった。

どんどん悪くなる現実から逃げるようにインターネットにのめりこんだ。

日々の中に、輝きなんてあるのかな。

2/17/2025, 9:59:56 AM

【時間よ止まれ】

家は出るしかない。

でも、学校に行くまでの時間が嫌でたまらない。

家から出て、学校に行くまでの時間が
止まればいいのに。

2/16/2025, 9:23:18 AM

【君の声がする】
          『恋慕』

「僕のこと、好き、ですか」
「好きだよ」
 
自分から聞いておいて、真っ赤に頬を染める。

「どしたの、不安になった?」
「…ちょっとだけ」
「好きだから、こういうことしてるんだよ」
 
ベットの上でも隣にいる。
こんなに隣にいたら、いつか一つになってしまうのではないかと思う。

「そうですよね」
「なんかあった?」
 
口が開きかけて、また閉じる。
話すのをためらっているのがわかる。

「…話したくない?」
「…言葉、見つからなくて」
 
なんかあると思うんですけどね、ともどかしそうにつぶやく。

「いつでもいいからね」
                       fin.

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