【あなたへの贈り物】
これが好きかなって。
これが喜んでくれるかなって。
そうしている時間が一番楽しい。
そして、あなたの笑顔が見られたら一番嬉しい。
【羅針盤】
羅針盤は、人々が進むべき道を表すものだ。
それがないと、どちらに進んだらいいのかわからなくなる。
進む道は自分では決めづらい。
誰かに決めてもらうのは楽だ。
責任をもたなくていいから。
【明日に向かって歩く、でも】
家に帰る。
制服を脱ぐ。
机に向かう。
教科書を開く。
ノートを開く。
シャーペンを握る。
文字をさらさらと書く。
真っ白だったノートが黒くなっていく。
ーーそんな夢を見た。
fin.
【風のいたずら】
見てるだけでいい。
その気持ちが崩れたのは、いつのことだったか。
目の前の人を笑顔にすることだけを考えて、自分の評価も気にしない彼を手に入れたい、と思ったのはいつだったか。
僕の気持ちに気づいてほしい、と。
いつの間にか、そう思っていた。
そしてそれと同時に、彼女の影を感じたのはいつだったか。
怖いぐらい唐突に、女の存在に気づいた。
好きだ、と気づくのとだめだ、と自制するのがほぼ同時だった。
無意識に、好きになっちゃだめだと思っていた。
目で追っても、見てて欲しくても。
絶対にそんなことなるわけないって、無理矢理押さえつけていた。
だから、彼女をつくった。
好きになってしまった気持ちを忘れるため。
ただそれでも忘れられなくて、どうしようもない痛みだけが胸の中にあった。
fin.
【まだ見ぬ景色】
新年だから目標を立てなさい。
できるだけ大きなことを。
先生はいつも無理難題を言う。
明日がどうなっているかすらわからないのに、それよりも先のことなんて考えられるわけがない。
そう思うと、授業中でも意識が薄らいでいった。
「当てられてるよ」
目が覚めたのは、親友が起こしてくれたからだった。
「今年の抱負だって」
ぼんやりとした思考の中に、大嫌いな"抱負"という言葉が聞こえた。
つい苛立ってくる。
「ないです、抱負なんて」
みんなの視線が私に集まる。
「…そうですか」
冷めた先生の声が響く。
少しだけ罪悪感を覚えながら、そのまま席に座った。
まだ未来は見えない。
fin.