【風のいたずら】
見てるだけでいい。
その気持ちが崩れたのは、いつのことだったか。
目の前の人を笑顔にすることだけを考えて、自分の評価も気にしない彼を手に入れたい、と思ったのはいつだったか。
僕の気持ちに気づいてほしい、と。
いつの間にか、そう思っていた。
そしてそれと同時に、彼女の影を感じたのはいつだったか。
怖いぐらい唐突に、女の存在に気づいた。
好きだ、と気づくのとだめだ、と自制するのがほぼ同時だった。
無意識に、好きになっちゃだめだと思っていた。
目で追っても、見てて欲しくても。
絶対にそんなことなるわけないって、無理矢理押さえつけていた。
だから、彼女をつくった。
好きになってしまった気持ちを忘れるため。
ただそれでも忘れられなくて、どうしようもない痛みだけが胸の中にあった。
fin.
1/18/2025, 9:57:44 AM