【宝物】
別々の道に進んだ幼なじみと、久しぶりに会った。
連絡を取ろうと思えばいつでも取れる。
それでも、時間の経過で少し躊躇う自分がいた。
冷たい風が吹きつける中、並んで帰った。
近況を話して、時々声を揃えて笑う。
一人で帰ったら、「寒い」しか言えなくなるのに。
私たちの周りだけ、ふわっと暖かくなったようだった。
緩やかな坂を登りきったら、楽しい時間は終わりを迎える。
特別に別れを惜しむわけでもなく、
「ばいばい」
と手を振り合う。
一人になった途端、寒さが身に沁みた。
「寒い」とつぶやく声が風に、哀しく溶ける。
こんな風に「ばいばい」なんて言ったら、明日も会えるんじゃないかって勘違いするじゃん。
fin.
【キャンドル】
title『誕生日ケーキ』
蝋燭は、否応なしに増えていく物だと思う。
自分の意志では止められない。
どんなに、増えないでと願っても。
でも、それが嬉しい時期もあったんだよな。
一歩ずつ大人になっていくのが。
今は、それが怖くて怖くてたまらない。
蝋燭なんて、増えなかったらいいのに。
fin.
(キャンドルは、蝋燭と同義だろうか。
そうだと信じて書かせてもらった)
【たくさんの想い出】
たくさんの想い出が頭を駆け巡る。
全部全部、自分の糧になっていると信じたい。
【冬になったら】
冬の一番は、やはり雪じゃないだろうか。
私の地域は年に数回しか雪が降らない。
雪が降った日は、いつもより数段冷たい空気の中で目が覚める。
布団に潜りそうなるのをこらえて窓の外を見ると、屋根にうっすら雪が積もっている。
それだけでテンションが上がっていたのは、つい数年前までの話だ。
最近は、もう一度目をつぶって布団をかぶる。
それでも、私は雪が降る日が待ち遠しい。
【はなればなれ】
「高校は離れるけど、ずっと友達だから」
でも、物理的な距離が離れると、心の距離も離れる。
少しずつ連絡するのに躊躇いを感じるようになってくる。
戻れるなら、あのときに戻りたいな。
fin.