【宝物】
別々の道に進んだ幼なじみと、久しぶりに会った。
連絡を取ろうと思えばいつでも取れる。
それでも、時間の経過で少し躊躇う自分がいた。
冷たい風が吹きつける中、並んで帰った。
近況を話して、時々声を揃えて笑う。
一人で帰ったら、「寒い」しか言えなくなるのに。
私たちの周りだけ、ふわっと暖かくなったようだった。
緩やかな坂を登りきったら、楽しい時間は終わりを迎える。
特別に別れを惜しむわけでもなく、
「ばいばい」
と手を振り合う。
一人になった途端、寒さが身に沁みた。
「寒い」とつぶやく声が風に、哀しく溶ける。
こんな風に「ばいばい」なんて言ったら、明日も会えるんじゃないかって勘違いするじゃん。
fin.
11/21/2024, 7:44:16 AM