シンビジウム

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11/5/2024, 8:48:56 AM

【哀愁を誘う】

         哀愁を誘うもの


地平線に沈む夕日

ツタに覆われた廃屋

稲刈りが終わった田

過去の教科書とノート

先輩を追いかける新人

過ぎていく季節

真っ赤に咲く彼岸花

風に揺れるカーテン

お揃いで買ったキーホルダー

祖父が語る戦争の記憶

大好きな人の視線の先

葉が落ちた桜の木

11/4/2024, 9:27:46 AM

【鏡の中の自分】

鏡の中の私は、笑っていた。
鏡のこちら側で泣いている私を嘲笑うように。
人を下に見ることでしか優位に立てない可哀想な笑み。
しばらく見つめていると、ゆっくり唇が動く。
"消えちゃえばいいのに"

鏡の中の私は、泣いていた。
鏡のこちら側で笑っている私を憐れむように。
悲劇のヒロインぶっただけの涙。
気持ち悪い視線を向けてくるから、口パクで伝える。
"消えちゃえばいいのに"


   「消えちゃえばいいのに。私なんか」
                       fin.

11/3/2024, 9:37:50 AM

【眠りにつく前に】

   眠りにつく前に思う。
   明日は、今日よりもっといい日に
  なったらいいなって。
   

11/2/2024, 9:48:55 AM

【永遠に】

永遠、なんてないと思う。
私が中学校の3年間を捧げたアイドルたちは、目にも止まらないスピードで辞めていった。
大好きな人がいなくなる感覚。
別の道に進む彼らを応援する気持ちはあっても、素直に「いってらっしゃい」は言えなかった。
帰ってこない「いってらっしゃい」なんて、悲しすぎる。

でも、「おかえり」を言う私たちを残してくれているのが明日デビュー日を迎える彼らだ。
この数年間、私は待つのが得意になった。
帰ってきてくれるのがわかりきっているから。
痛いだけのオタクかもしれないが、信じている。
信じて、「おかえり」を言うことだけが使命だと思う。
                       fin.

11/1/2024, 7:15:23 AM

【理想郷】


「東京に行きたい」

家族に言うのは初めてだったけれど、ずっと考えていたことだった。

「東京なんて、やめておきなさい」

母にそう反対されるのはわかりきっていた。

「東京に行って、何がしたいんだ?」

父だけが落ち着いて話を聞こうとしてくれる。
まぁ、本当は落ち着いていないのかもしれないけれど。

「東京で、音楽の勉強がしたい。ここよりもっと広い場所で自分の才能を試してみたい」

「東京なんて、行かせられない。よく考えなさい」

そう言って、母は台所に向かった。

「…考えた結果だよ。ねぇ、」

わかってよ。
いつの間にか父もいなくなっていた。
未来への道は、閉ざされたまま。
                       fin.

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