鳥の様に自由に羽ばたき大空へ翔びたい
しかし それは幻想であり
鳥達は必死に羽ばたいている
楽しんでいる訳ではないのは
分かっているのだけれども
何時も考えてしまう
そして自らに足枷をし
翔べない事を言い訳にして
満足をしている人間が1人
翔べないのではなくて
翔ぶ事を放棄してしまった
哀れな人間が1人
鳥の様に自由に羽ばたき大空へ翔びたい
羽ばたく勇気を欠片程も持たない自分は
今日も1人呟いている
マッチングアプリの成就者情報。画面の中のクソ野郎が嘲笑するように俺を見る。
まだ奥さんいないんか?やばいぞ?
お前くらいの歳の人は、もうみんな結婚してるぞ。
何もわかっていない。そんな同調圧力をかけてくる方がダサいんだ。そんなの、人それぞれじゃないか。同性婚も認められつつあるこのご時世に、結婚しないことを認めないなんて、おかしい。
歳とって、焦って、相手を探して結婚する。これがみんなの普通らしい。少なくとも、親が言う普通らしい。でも、それは違う。あえて俺は断言してやる。
俺は人を好きになったことはある。
だけど、人を愛したことはない。
かわいいな。好き。優しいな。好き。
そんな、陳腐でありふれた恋。それしか俺は知らない。
でも、恋なんてもので、たったそれだけのもので、
結婚を決めるわけにはいかない。
結婚は、人生を縛り付ける足枷だから。
捻くれ者。僻んでいるだけだ。
音が、並ぶ。並ぶ。並ぶ。
画面の中のサイトの男性をタップする。
26歳と書かれてある。
画面の中の顔は輝いている。
作られた笑顔で。
思わずスマホを投げた。
俺は、すこしおかしいのかもしれない。
本能的な意味でみるならば。
でも、俺はそういう風に生きている。
他の野郎どもとは違って、理性に従って生きている。
俺は結婚によって失うものを知っている。
失わないために生きているだけだ。
失うものなんてないだろ。
壊れたテレビの砂嵐が言う。ザーザーザー。
うるさい。
俺は自由を失いたくないんだ。ただ、それだけ。
赤が床に広がっている。
フランスを自由にしたのは、この赤だった。
俺は自由だ。誰がなんと言おうと。
束縛から逃れ、大空へ飛び立つんだ。
部屋はこんなに締め切っていて狭いんだぜ?
いったいどこに飛び立つって言うんだ?
割れた電球が大空を揺れながら騙る。
楽しそうに揺れてるぞ。
窓を開ければ、すぐにでも飛び立てるはずさ。
ヒタ、ヒタと歩き、カーテンを開け、窓を開ける。
夜風が部屋を吹き抜けようとする。
そこを玄関が立ち塞がりとおせんぼする。
通さない。通せない。玄関は頑固だ。
けちんぼ、と風が言い、生暖かいニオイを運ぶ。
んーーと、背伸びをして定位置へと歩き出す。
何かが足に触れる。
「クソ・・・やろ・・・う」
ゴミがガサガサと喋っている。
少し蹴ってやる。ゴミは押し黙る。
「恋人が欲しい」
口ずさんでみた。
でも、それはうわべだけでしょ。
キッチンに置かれた包丁がテラテラと語る。
さすが包丁。奴は俺の代弁者だ。
普通の人には恋人がいる。または、いた。
だから、「恋人が欲しい」って言うんだ。
他の人の前では。
でも、それは愛情を求めているからではない。
それはただの、防衛本能。
人とはぐれないための。そんなこと、わかってる。
なら、逃してあげればよかったじゃん。
束になった新聞紙が口々に言う。
だって、俺を傷つけるんだぜ?
俺は何もしてなかったのに。
あんた、おかしいよ。異常者だ。
自分のことを棚に上げた、幾人かの男が言う。
異常者はあんたらだ。
あんたらがいなければ、アイツは逃げなかった。
あんたらが嫌いだから、あいつは逃げ出したんだ。
あんたらが嫌いだから、俺の、恋人は、逃げ出したんだ。
逃げ出したんだ。にげだしたんだ。逃げ出したんだ。ニゲダシタンダ。逃げ出したんだ。ニゲダシタンダ。にげだしたんだ。NIGEDASITANDA。逃げ出したんだ。
ボソリと俺は言った。
「恋人が欲しい」
見ないで おかしい?
見ないで おかしい?
誰も私のことなど見ないはずなのに
私は取るに足りない平凡な人間であるはずなのに
どうしてあいつらは私のことを見るのだろう
バスの中 電車の中
道で 駅で スーパーで
見ている
皆が見ている
私のことをちらちらと気にしている
服が変だった 髪が変だった
何かが変だった
社会の落伍者を責めている 非難している
違うそんなはずはない
私はいたって平凡な外見をしているはずだし
仮に社会の落伍者だったとしても外からはわからないはず
なのに見ている 見られている
ちらちらと見ている 視線が刺さる
私の体を貫通して
お腹の辺りまで突き刺さって
ねじ込んで息を止めてくる
恐怖がじわじわと私を侵食して
叫びだしたくなるが外なのでそんなことはできなくて
ただただ眉間に皺を寄せ下を向くばかり
耐えられない 視線に
一瞥だけでも耐えられない 苦しい
誰も私を見ないで 気にしないで
責めないで 苛まないで 見ないで
見る それすなわち気にする すなわち排除
視線を向けられた瞬間
私の精神はぼろぼろに崩れ
死に始める
邪眼を持ってるのは私じゃない
あいつらが持ってるんだ
私以外の全員の目が呪われている
どうして耐えられる?平気で生きられる?
呪われた社会で平静を保つなど不可能だ
だけど私は普通でいなければいけない
突然叫び出すなどありえない異端
普通でいなければいけない
落ち着いて 大人しく
聴き訳がよく 物わかりがよく
説明が簡潔で 健康で
健常で 誰にも迷惑をかけず
依存せず 一人で 自立して
生き続けなければいけない
普通でいなければならない
思考を回しても回しても
周囲の視線への恐怖は消えない
どんなに自分を責めてみても
容赦なくびしびし突き刺さる
結局私がどんなに自分を責めようと
反省してみせようと
外からの視線は何も変わらないのかもしれないけど
反省してみせることなど当然のことで
最低限で 存在し続けるためには
みんなの役に立たなければいけない
そんなことは私が一番よくわかってる。
だからこそ 役に立っていない今この瞬間
視線を恐れ 恐怖してしまうのかもしれない
思考 回しても回しても恐ろしくて恐ろしい
私は全身から針を生やし
視線を飛ばす人間全てに突き刺す妄想をする
それでやっとイーブン
なんて理不尽
何も悪いことをしていないのに
針で刺されるあいつらのことを
かわいそうにと私は思った。
日が暮れてブレーキランプだらけの道を
バスはごとごと進んで
家はまだ遠い
僕だけ残していったきみへ
未来、なんて不安定なんだろうか
なぜ 僕は 希望をもっている?
生物だから 生きる
生き残って 未来へ繋ぐ
今の僕には、叶わない
虚無感で潰れた心
寂寥感で満たされた心
僕の心が壊れた5年前
不幸がきみを対岸へと連れて行ってしまった
僕の世界に「約束」だけが残った
来世邂逅 出来たら良いな
言葉があるからきっと出来るよな
確かにきみも言ってたし
きみの声、あの時のトーン
記憶力良いんだよ、知ってた?
ここまで 生きて来た
きみとの約束は守ったよ
褒めて欲しい
褒めてくれる?
こんな身体になっちゃったけども
色んな事をきた
良い事も悪い事も
いっぱい、してきた
全部、見ててくれたよな?
全部、話してあげるから
心を許した人も居たんだ
でもね、踏み切れなかったんだ
きみが僕のほとんどを
持って行ってしまったから
抜け殻の僕には もう人を愛せる
資格なんて無くなってたんだ
きみの未来、僕の未来
一緒になろうね
長く待たせたなんて思わない
きみとの約束、守る為だから
今度は 二人、強い命で 生まれて来よう
約束だ きっとだ
きみと歩いたあの小路も
きみと渡ったあの橋梁も
全部、全部 覚えてる
今でも 一人で歩いてみたり
僕の指には2つの指輪
ここまで 生きて来たよ
きみとの約束守ったよ
褒めて欲しい
褒めてくれるよね
こんな身体になっちゃったけど
きみの未来、僕の未来
一緒になろう
長く待たせたなんて思わない
きみとの約束、守る為だから
今度は 二人、強い命で 生まれて来よう
約束だ
きっとだ
「 記憶 」
私が1番遠い記憶を思い出そうとすると、必ずと言って良い程、何処までも続く草原を思い出すのです。
周りには本当に何もなく、たった1本、青々と茂った大樹が静かに生えているだけでした。
その日は綺麗な青空が良く見えて、雲が優しく流れいるような、とても静かな場所でした。
もしかしたら風すら吹いていなかったのかもしれません。
そして今では顔を思い出す事すらできませんが、たった1人、少女がその大樹の下に静かに佇んでおりました。
そうして私はと言いますと、少し離れた所からその少女を延々と目続け、そして記憶は終わるのです。
そうです、その前の記憶も先の記憶もその少女との不思議な場所での記憶は全くないのです。
少女は微笑んでいたようにも、怒っていたようにも、困っていたようにも見えるのですが、今では確かめる術さえないのです。
ですが私には分かるのです。
必ず再びその少女と会うことができる事を。