欠損品

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12/22/2024, 11:58:31 AM

ゆずの香りがする また貴女の声を思い出した

台所にふらっと
特に好きな訳ではないけれど ゆずサイダーを作ってみる

小さい頃のこの季節はよく一緒にゆず風呂に入ったよね。
私達 いつから変わっちゃったんだろうね
いつになったら元に戻ってきてくれるのかな

こんなに想っているのに 人間って不思議なもので
どんどん顔も忘れていく

顔も声も想いも
全て忘れてしまう前に お転婆な貴女を探すために
ゆずの香りが漂う浴槽
ここで、貴女と同じ様に 同じ楽園に

すぐ迎えに行くから
また一緒に 庭で採ったゆずを浮かべよう


フィクション

12/21/2024, 12:52:08 PM

中学一年生の春
運動に苦手意識があった私だが、
友達に誘われてソフトテニス部に入部した

雨の日も風が酷い時も、雪が降る日も練習だったけど
12人の仲間のおかげで毎日が楽しかった

後輩も入部してさらに応援が大きくなった

中学最後の総体
団体で県大会への切符を掴んだ
汗 雨 涙 それを上回る喜び

「まだみんなでテニスができる」

直径約6センチの軽いボールを大空に放ち
ラケットで勢いよく打つ
サービスエースの心地良さ 大きな歓声
中学3年間ソフトテニス部で見た景色

未だに夢に見るほど あれは私の青春そのもの


ノンフィクション

12/20/2024, 12:51:53 PM

7時35分
携帯の音
いつも通りの景色

カーテンを開ける母
「今日は学校行けそう?」 「 」「 ごめんなさい 」
いつも通りの会話
「 仕事行ってくるね。」

8時47分
着信音と心臓の鼓動が 八畳の部屋に鳴り響く。
生温い涙 酷い頭痛 ボロボロの左手首
理由は沢山あるはずなのに

「 欠席連絡は、しとかないとなぁ 」
携帯を手に取り

何かを諦めたように、全てがどうでも良くなった
手は空を切り鈍い音が鳴り響く。
壁に穴が空いてしまったけれど、怒られはしない
止めてくれる人など どこにも見当たらない


12月20日 金曜日 午前9時13分
苦しいのはこれで最後


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