理想郷
今の私に理想などない。現在は郷を離れているが、離れたからこそ郷の良さを知った。空気の味がおいしいところ、時間がゆっくり流れているところ、料理に深みがあっておいしいところ、親戚がたくさんいて和気あいあいに話せて楽しいところ、学生時代の思い出がたくさん詰まっているところ。あの頃は気づかなかった良さ、居心地の良さを知った。
そんな私だが、やはり昔の自分には理想があった。すぐ電車がくるような都会で、若者が集まる原宿などのお店に学校帰りに行って…。もちろん理想を持つことは自由だが、理想というのは自分が得するようなことだけを集めた夢に違いない。
私は暮らしに理想を持つことをやめ、今の暮らしをいかに充実させたものにするかを考え、想像することにした。
懐かしく思うこと
私の地元では毎年11月に祭りが開催される。数えきれない程の屋台があって、フルーツ飴やフライドポテト、焼き鳥、わたがし、きゅうり漬けを食べていた。屋台通りを歩くと、学校の友達や親戚に会い、立ち話をしたり、時には一緒に屋台をまわったりもした。
現在も祭りは開催されているが、県外に就職したため、なかなか11月に地元に帰れない。たまに友達がSNSに写真を投稿しているのを見て、とても懐かしく思う。またいつか祭りに参加して、友達や親戚に会って話したいものだ。
私はこの街のヒロイン。小さい子が他の子からいじめられていたら、止めに入る。また、電車のホームにゴミが捨ててあったら、拾ってゴミ箱に捨てる。そのような、人から気づかれないような小さなことから、人を守るために戦う大きなこともする。しかしこれは私の理想であって、実際はやりたくても勇気がなく、見てみぬふりをしてしまう。もう一つの人生があったらぜひ街のヒロインとして人や社会に貢献したいものだ。