‐狭い部屋‐
瞳のレンズの向かふ側
泡の上がる水音と
靜かに泳ぐわたしの古代魚
水槽前で照らされ乍ら
ミルクマグを兩手に抱へ
ぼんやり口開け眺める
年下のキミ
華奢で細いなで肩が
ダレた襟首から零れてる
白い肩に咬みついて
紅い痕を殘したら
困るだらうと意地惡したら
振り返らずに首を傾け
ココにもしてよと
要求してくる
クスクス笑ひで一枚上手
學校サボつて
いつも入り滲つてる
年下のキミ
‐これは失恋の物語、始まりは…‐
廻轉琴が掻き鳴らされる
廻る廻る運命の輪
給水塔を遙か越えて
共に作つたペンシルロケット
いつかあの星に行かうと
約束をした左の小指
こどもの約束夜空を越えて
あなたは獨り星に成つた
洋琴を奏で屆けるやうに
キーボードを叩いて彈いて
あなたが曲を奏でるやうに
わたしが謳つてあなたに傳へる
あなたはわたしの廻轉琴
わたしはあなたの自動書紀
國立博物館で待つてゐて
黒鐵天象機で夢を描いて
素敵な夜で終わりませう
眞鍮のトートロンの前で待つてゐて
雙葉鈴木龍の化石の前で待つてるわ
‐梅雨‐
硫酸の雨
亞鉛鍍鐵板の雨避け
打つて滴り流れ
煙りを出して
泣いてゐる
派手な漢字の飾燈電飾
電氣音を走らせ乍ら
ヂヂと呟き瞬いた
濕氣つたシガー
掌隱し
君のジッポで
火を燈けた
年をとらない僕の横顏
管が繋がる手首の端に
見え隱れする墨印條形碼
君の言葉を想ひ出す
雨が好きだと言つてたね
‐今日のお題は長すぎる
気がのらないから勝手にかく‐
人生とは迷ひ續けるもの
人は欲しがる際に
間違ひ續けるもの
何人だらうと正解は解らず
有るとせば
我が後に道が出來る
‐ただ必死に走るキミ(私)
何かから逃げるように‐
地圖から抹消された
土瀝青路
ぼくが君を追ひかける
本氣で走つて逃げるといい
どれだけ逃げても追ひかける
どんな罠でも嗅ぎ分けて
君の足跡つけていく
フードの下から見え隱れする
紅い瞳と長い鼻面
カーブミラーに映つた獸
何處まで行つても
逃がさない
乾いたやうな
激しい衝動
月夜の夜は危險な入り口
ほらほら逃げなきや危ないよ
洩れる呼吸と濕つた足音
君の白襟引き裂いて
指で千切つて潰した野苺
君の首筋塗り度くつたら
フードをとつて姿を見せよう
割れた鏡に映つた獸
命乞ひなんか
聞こえない
墮ちる時間を樂しんで