「え?諦めちゃうの?」
「諦めるっていうか…好きだけど別に付き合いたいと思ってるわけじゃないというか…」
「うそ、僕だよ?」
「知ったや否や自信がすごいな。いや、そう、確かに先輩ですけど」
「ダメだよ、諦めないでよ。何で僕と付き合いたくないの?」
「ええ?何で…まあ憧れに近いところもありましたし、付き合えるとは思ってないのでそこまで想定していなかったというか…。…ああ、あと」
「あと?」
「私、告白されるのに憧れてるんです」
「えっ」
「ねえ、先輩?何で私に諦めてほしくないんですか?」
「や、あの…」
「ね、何でなのか私に教えてくださいよ」
にやにやして袖を引けば、先輩は見たことないくらいに赤い顔をして不明瞭な呻き声を溢す。そして、慌てたように駆け出した。脈ありどころの騒ぎじゃないぞこれ。
「今日ね、好きな人に告白する夢見た」
「…それは男性ですか?女性ですか?」
「アキネーター始まってる?」
「私が好きな人お~~~まえ!」
「だ~れだ!?じゃないんだ」
教えてくれてありがとね。
「今度の日曜から付き合ってほしいんだけど」
「え?いいっすよ。どこ?」
「映画館。いいレストランあるから予約しとく、帰りに行こ」
「わあい。奢り?」
「…ばか。いいよ」
誰が馬鹿だ、誰が。そう思った瞬間「じゃあ日曜よろしく」とあの人が笑って去っていく。それを見て、その背中をじいと見送って、はあとため息を落とした。
「日曜から恋人ってことでいいんだよね…?」
本当に、ばかはどっちだばぁか。
「私金平糖作る人になろっかな」
大学生にもなってそんなことを溢せば、たまたま隣に座っていたギャルが「最高~」と手をあげて笑った。
「初めて作ったのはあたしにちょうだい」
「いいよ、じゃあ作ったら呼ぶからLINE教えて」
そうしてたまに話す程度だったギャルは、私の友達になった。
"星のかけら"