君の瞳はキラキラした宇宙がそこにあるようで、吸い込まれるようにじっと見つめてしまう。
「どうしたの? そんなに見つめて」
「きれいだなあ、って」
「そう? ふふ」
照れを含んだ君の声ですら、キラキラしているような気がして。
星空の下、月明かりを頼りに。
「……なんで真夜中にピクニックなんですか……」
「天体観測に美味しいお弁当がついてきたと思えば」
持参したワインはグラスの代わりのプラスチックカップに。サンドイッチはここに来るまでの間に偏った荷物に押されていびつな形をしているけれど。
「……まあ、悪くはないですね」
「でしょう?」
素朴さと艶やかさが混ざる不思議な時間。
「悪口言われて悲しい」
「んー、そうじゃないだろ?」
「悔しい?」
「もうひと声」
「腹が立つ」
「その調子」
「許さん」
「いいね」
「……絶対に負けない」
「そう、それでいい」
「……ごめん、気持ちには答えられないかな」
申し訳なさそうに困り顔でそう答えた先輩の瞳を、私はじっと見つめていた。
「そう、ですよね。先輩って、色んな人に慕われてるし」
「ごめんね」
でも、私は知っている。人の良さそうな雰囲気のこの人が、本当はどんな人なのか。
「……先輩、ひとつだけいいですか」
「うん?」
「ひとつだけ、思い出をください」
私の言葉に先輩の瞳の色が変わる。困り顔に少し影が入って、口元がゆるく持ち上がった。
「……それ、どういう意味になるか分かって言ってる?」
「はい」
頷いた途端、私の視界は近付いてきた先輩によって塞がれた。
たとえば、お年玉を貯めて買ったプラモデル。
たとえば、初めて貰ったラブレター。
たとえば、仲良しの友達とお揃いのキーホルダー。
たとえば、小さな愛おしい手が摘み取ったたんぽぽの花。
たとえば、最期にたった一言交わせた会話。
たとえば、新しく産まれた命を見守る母親の涙。
たとえば、どれだけ真似しても再現できないあのご飯の味。