5日目
朧月夜だったあの日、私は空の神様に向かってお願いごとをした。
すると。薄い白いモヤのかかった空から神様が舞い降り私にこう告げた。
『月とは残酷なものじゃ。満月であれば狼男が牙をむき、三日月であれば吸血鬼が飛び回る。新月になれば魑魅魍魎が闊歩する。不吉不吉と言われ続けた月でも、光り輝く姿はほかの何よりも美しいものじゃ。君もいつか月みたいに輝ける日が来るじゃろう。自分で輝くことができなければ太陽を見つけるのじゃ。月は太陽でも輝くことができる。君にとっての太陽は月にとってかけがえのない存在にもなるのじゃよ。』
とても綺麗に輝く月が、私に似ている月が本当は嫌いだった。
1人じゃ何もできない私が、大嫌いだった。
ならば神様が私に告げた通り太陽を見つけよう。
太陽さえ見つけることができれば私は誰よりも輝くことができる。
あの朧月夜の日、神様が私に告げた言葉で私の人生は大きく変わった。
幸せだと思える日が増えた。
どうか、どうか神様、もう1つだけ私のお願いを聞いてください。
「この幸せを、永遠に。」
4日目
「誰かのためになるなら」
そう何度も自分に言い聞かせ辛いことを沢山してきた。
でも、もう自分に嘘をつくのは嫌。
私は私のために、何かをしたい。
誰かのためにしたことが誰かを傷つけるかもしれない。
そんな代償を背負ってまでしたいと思うことは無い。
だから私は今もこれからも私のために何かをする。
3日目
何が友情で何が友情じゃないのか、私には理解できない。
なんでも話せるから友情がある?
信頼できるから友情がある?
私は人を信じることができない。
それほど傷ついた代償は大きい。
私も人間だ。
話したくないことなんて山ほどある。
その中で、「友達だから」、「親友だから」という上辺だけの「友情」に縛られるのが何より苦痛である。
偽物の友情なんてなくていい。
私には心から友達、親友と呼べる人がいない。
だから今日もまた1人上辺だけの「友達」のために偽物の「私」を見せる。
2日目
「今欲しいものか、」
そう聞かれて答えるのはただ一つだけ。
「小説、かな」
小さい時から難しい本ばかりを読む私を両親は軽蔑していた。
大きくなった今でも毎日肌身離さず本を持ち歩いて、隙があれば読んでいる。
そんな私を同級生も軽蔑していた。
でも、私はやりたいことをしていたいし、好きな本を好きなだけ読んでいたい。
だから何回聞かれても私は答える。
「小説が欲しい。」
1日目
「名前、なんて読むの?」
私はそう聞かれるのが幼少期から憂鬱である。
自分の名前を漢字で書いて他人に当てられたことがない。
特別な漢字という訳でもなく、特別な名前という訳でもない。
ただ、読み方が少し複雑なだけ。
みんなは私の性格からは読み取れないような名前だと言う。
私は自分の名前を、世界に一つだけしかないと思っている。それくらい漢字からは読み取れない名前だ。
私は私の名前が好きで嫌い。
でも、名前を聞かれると答えてしまう。
「私の名前は…」