『鐘の音』
ゴーンゴーンと遠くで鐘の音がする。
この音を聞くのは、最後になるかもしれない。
「今年も終わりだねえ」
「そうだねえ」
のんびりした口調の彼女につられて、自分の語尾も伸びてしまった。
二人でこたつに肩まで入り込み、ぬくぬくとしながら遠くの鐘の音を聞く。
「来年もよろしくねえ」
「ふふっ、こちらこそ」
おでこをコツンとくっつけて、この上ない幸福に浸る。
ゴーンゴーンと一定のリズムを刻む除夜の鐘を、もう、一人で聞くことはないだろう。
これからは、毎年彼女と一緒に聞けるのだから――。
『つまらないことでも』
きみはいつも笑顔だった。
つらい時も、苦しい時も、笑顔を絶やさなかった。
僕がどんなにつまらないことを言っても、必ず笑ってくれた。
きみがいるだけで、幸せだったよ。
でも、くだらないことも、つまらないことも、笑ってくれていたきみがいないこんな世界は、とてもとても、つまらないよ。
『誰かのためになるならば』
この私が役に立つと言うのなら、何でもしよう。
命が欲しいのなら、喜んで差し出そう。
たとえそれが、私を化け物と呼んで追放した人間達のためだとしても。
私が誰かのためになるならば、これ以上の幸福はない。
『鳥かご』
鳥籠って素敵よね。
鳥の姿はちゃんと見えているのに、鳥は逃げることができないの。
本当に素敵な物だわ。
さてと、特注しておいた鳥籠が届く頃ね。
あの子に似合うものをデザインして、素材にもこだわった鳥籠。
あの子を入れるのが楽しみだわ。
あの子は気に入ってくれるかしら?
『友情』
あの子のことは、絶対に忘れたくない。
この気持ちだけは、絶対に忘れたくない。
あの日々と、お互いのあの想いだけは、絶対に忘れない。
たとえ、私があの子の敵だとしても。
私達の間には、確かに友情があったのだ。