酸素不足

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5/2/2024, 11:18:59 AM

『優しくしないで』


本当はわかってるの。
私に優しくしてくれるのは、私が他とは違うからなんでしょ?
見えなくなった右目に、動かせない下半身。
私が暴力によって失われたものは他にも沢山ある。

どう考えても私は厄介者なのに、あなたは優しい笑顔で接してくるばかり。
そんなに優しくしないで。
あなたの優しさに依存してしまうから。

今日も変わらぬ笑顔で、優しく私の頭を撫でるあなたに、私は「ワンッ」と泣くしかなかった。

5/1/2024, 12:59:04 PM

『カラフル』


赤、青、黄、緑、紫、橙、茶、灰。
世の中は沢山の色であふれている。

ぼくの世界を、貴方は色鮮やかにしてくれた。
ぼくの世界を、何も無いモノクロにしたのも貴女。

こんなモノクロの世界じゃ、つまらないよ。


ああ、貴女はまた、ぼくの世界に色を付けてくれた。
鮮やかで温かみのある、真っ赤な色を。

4/30/2024, 10:42:09 AM

『楽園』


「ねえねえ、楽園ってどんな場所だと思う?」
「楽園? うーん、難しいなあ」
「私の思う楽園はね、この場所!」
「ここ?ただの部屋だし、特別な物は何も無いよ?」
「私にとっては、あなたと一緒なら、どんな場所でも楽園なの!」
「何それ。 じゃあ、私がいなかったら、どこも地獄ってこと?」
「そう。 あなたがいなかったら、私は息もできないの」
「………ふーん」


あの時は、恥ずかしくて素っ気ない返事をしてしまったけど、本当はとっても嬉しかったの。
私がいるだけで楽園だなんて言ってくれたのは、あなただけだった。
ねえ、私がいないと息もできないんでしょ?
私がいないとそこは地獄なんでしょ?
だったら、私は今からあなたのところへ行くわ。

私は、脳内をあの子の笑顔でいっぱいにして、大きく足を踏み出した。

4/29/2024, 11:52:55 AM

『風に乗って』


ビュウと、一瞬、強い風が吹く。
その風に、持っていた手紙を巻き上げられてしまった。
風に連れ去られて行く手紙を、追いかけることも無く、だだ見つめる。
あの手紙が、彼の元に届くことは無いけれど、あのまま風に乗って、どこか遠くまで行かないだろうか。
私の想いと共に、遥か上空へと運んではくれないだろうか。
空よりも高い、ずっとずっと遠い彼方まで。

彼のいる、天国まで。

4/29/2024, 1:53:32 AM

『刹那』


僕らが生きている時間なんて、地球規模で考えたらほんの一瞬だよ。
僕らは百年も生きられないのだから、今を楽しく生きようよ。
刹那主義だって?
良いじゃないか。未来のことは何も分からないし、過去は変えられないのだから。
ただ、あなたとこうして一緒にいられることが、僕には大切なことなんだ。

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