一人で目覚めた朝に「おはよう」と話し
仏壇の花の水を取り替える
当たり前にあった笑顔と
当たり前に用意された三食は
もう当たり前では無くなってしまったのだと
音も匂いもないキッチンで
理解する
-2nd story-
「今秋新作のケーキは絶対に買うぞー!」
仕事終わりの全力移動
乗り込んだケーキ屋さんのショーケースには
『sole out』の札ひとつ
#喪失感
「世界に一つだけわからないことがある」
付き合ってから3年目の秋
木の葉の色付きより早く頬を赤くした彼が
明後日の方を向いて言った
「随分と壮大な"わからない"だね。何だろうか」
いつになったらプロポーズするのよアンタは!
問題はそっちなんですけれど〜
…というのは心の声
気持ちは枯葉のように散りかけだ
「えぇっと、つまりだな…
世界に一つだけわからないことは、きみの気持ちだ!
結婚をしてくれるのか、してくれないのか、どっちだ!?」
どっちだって、アンター!
鈍過ぎだろー!
"世界に一つだけ"のプロポーズは肌寒い…
冬を迎えそうな目で、彼の唇を塞いだ
-2nd story-
世界に一つだけの触り心地!
世界に一つだけの温もり!
世界に一つだけの満足感!!
通販サイトでポチッてしまった高額商品と
"世界に一つだけ"の騙しテクニックに
今でも涙ぐむ
(嘘だろ…)
同性のあいつが好きだとわかった瞬間
息が止まりそうなくらいの酸欠と
激しい胸の鼓動が
ドクンドクンと全身を貫いた
-2nd story-
『書く習慣』でみんなの投稿を読む
ドキッ
素敵な文章を目にしたときに
高鳴るのは"胸の鼓動"
発車ベルー!!
遅刻だぁぁぁー!と慌てたのがいけない
駅の階段を踏み外す
瞬時に襲う羞恥心
踊るように身体を捻らせて着地した
(グキッ)
足首に激痛と転がる私のローファー
「大丈夫…?じゃないか」
そっと差し出された声と手に顔を上げると
ダンスを誘う王子様?
わたしを見て朗らかに笑んでいたのは
片想い中の先輩だった
#踊るように
「時告げ鳥って『にわとり』の別名?
わぁ。何だか素敵ねぇ」
「君が作ってくれる朝ごはんの"玉子焼き"も素敵だよ」
両親のラブトークを寝起きに聞きながら
スマホをタップする
『おはよう。ちゃんと起きれた?』
モーニングコールは彼女へ
今日のデートに緊張して
昨夜はあまり寝れなかったんだよね
#時を告げる