さいごに
「また会いましょう」
その一言が言えれば良かった。
その一言があれば、もう一つの未来があったかもしれない。
そんな風に思えるから、切なくて。
あとひと呼吸の勇気があれば、なんて。
心にそっと傷をつけて去っていく、あの人に。
ほんの少しの幸せを願ってしまう。
ころころ変わる、私の感情。
時に激しく、時に穏やか。
それはまるで嵐の中にいるよう。
緩急ついて、心は闇夜。
もくもくと込み上げる想いは積乱雲のその様で。
泣きたい夜はしっとりとした雨に似て。
毎日違う私の心。
おんなじ日はひとつもなくて。
暖かな風も、ひんやりとした静けさも。
すべてが私に重なって。
そんな私は空模様。
2024.08.19
笑い方が上手くなった、ように思う。
私の心を隠すための笑顔。
人に合わせて、肯定の相槌を打つ。
疲れたなあ。そう思うことも増えてきて。
ふとした時に鏡を見て、笑顔を作る。
一日の始まりに、休憩中に、お風呂上がりに。
にこっと笑ってみて。
今日もかわいいな、なんて思えたらその笑顔は隠すための笑顔なんかじゃなくて。
鏡見て、笑って。
その笑顔がほんとになるように。
素敵な笑顔で今日も乗り切れるように。
頑張りすぎないための、笑顔のおまじない。
いつまでも捨てられないものをずるずるずるずる引き摺って。
いつまでも頭の中に残ってる。
それはいやな思い出だったり、苦い経験。
自分の発した言葉や仕草、行動で選択してきた過去。
そんなものばかりが頭の片隅にいる。
どうしたら忘れられるだろうか。
暗い、暗い、暗い。
ひたすらに暗い。
頭の中は墨で塗りたくられたように真っ黒で。
脳内に連動して気持ちまで底深くまで沈んでいく。
そんな時、私は妄想する。
どうにもならない時もあるけれど、ひたすらに考えを巡らせて。
脳内に広がる空間で空から落ちてみるんだ。
高い、高い、本当に高いところ。
地平線が見える海の上がいい。
はるか上空から身を投げ出して、パラシュートなんてつけないで。
身ひとつ、両手を目一杯に広げ、ばっと飛び出す。
ぐんぐん体は落ちていって。
厚い雲間を抜けた先は何にもない、遥か彼方まで続く広い海で。
視界に映るのは、キラキラと光る水の青。
そうだなあ。天気はやっぱり快晴がいい。
時間は明け方。清々しいほどの空気をこれでもかと吸い込んで。
新鮮な空気で肺を満たす。新しい酸素が血管をたどり、頭の先から足の先まで、体中の酸素が入れ替わる。
それほどまでの清さ。
体が生まれ変わるのを感じながら、地平線のその先を視界に映し落ちていく。
風の音しか耳に入らない空間で空と海の境界を見てると、自分の考えてることなんて本当にちっぽけなことなんだ。
つい、考え込んでしまうけれど、なんだかどうでもいいことのように思えてくる。
暗い思考は空の上へ置いてきてしまえばいい。
置いてきた先に残るのはきっと前向きで明るい、清らかな気持ちだけ。
どこかの誰かの、心に少しだけ残ればいいなと思う。
沈んでしまった時に、ちょっとだけ妄想してくれればいいなと思う。
おんなじような気持ちの誰かが綺麗な青空を、上を向いて歩ける、そんな文章が書けたらいいなって思う。
2024.08.18