〖ぬるい炭酸と無口な君〗
「いや、何か言ってや…」
インターハイも終わり、受験勉強真っ只中の高3の夏。
人生最後の夏休みに、俺は一世一代の大勝負に出た。
幼稚園の頃から、ずっと一緒に育ち、家も近所で仲の良かった幼馴染に、告白した。
前日、LINEでの事だ。
「なあ、明日さ。修業式終わりで体育館裏きて」
「ええけど、何?」
「ええやん、別に。ジュース奢るから」
「何?ええことあったん?ほな、いつもの炭酸のやつな」
そして、当日。
いつもと変わらず、満面の笑みで現れた。
嬉しそうにいつもの炭酸を選び、緑の缶が2本落ちた。
それを拾う姿を見た時、今だと思ってしまった。
「俺らさ、付き合わへん。俺、お前のこと、好きやねん」
嬉しそうにしていた幼馴染の表情は一変…。
緑の缶が2本、自販機に取り残されたまま、数分の時が流れた。
俺にとっては、この数分はどの映画よりも長かった。
逃げ出したかった、恥ずかしかった、泣きたかった。
幼馴染が一言…。
「遅いわ…。もっと早く気づけよ、バカ」
その時、俺の思い出に残ったのは。。。
「炭酸、ぬるいなぁ……」
半袖さぁ…。
めっちゃ脇毛見えるから、剃らなあかんねん。
汗臭うから、拭かなあかんし。
袖少し長いのがいいなぁ…。
過去に行けるなら──────────。
もう一度、会いたい。
今の姿を見て欲しくない。
頑張って生きていることを褒めて欲しい。
何でもっとできてないのだろう、恥ずかしい。
分からないこと、もっと教えて欲しい。
こんなこともできてないとか、怒られたくない。
あなたに会いたい。
もっと凄い人になってから…。
過去に行けるなら、ね……。
お前と出会ったのは、10歳のころだったかな?
俺もお前もさ、ハグレモノでよ。
お前から声をかけてくれたよな。
野垂れ死にしそうに震えていた俺に……。
ありがとな。
俺、お前と一緒に過ごせて楽しかったよ。
また、いつか。
さようなら。
銃声と共に、彼は親友を殺した ⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯⎯。
「またいつか」作・桃の精霊
君って、凄いよね!
強くて、カッコよくて、誰よりも綺麗で、
何やってもスマートにできちゃうし……。
それなのに、どうして1人なのかな?
羨望の眼差しの先にいることが、辛いのかな?
不可能がないと思われていることが、重圧なのかな?
ボクには何もないけど。
ほんの少しでも、君の力になれるなら…。