〖ぬるい炭酸と無口な君〗
「いや、何か言ってや…」
インターハイも終わり、受験勉強真っ只中の高3の夏。
人生最後の夏休みに、俺は一世一代の大勝負に出た。
幼稚園の頃から、ずっと一緒に育ち、家も近所で仲の良かった幼馴染に、告白した。
前日、LINEでの事だ。
「なあ、明日さ。修業式終わりで体育館裏きて」
「ええけど、何?」
「ええやん、別に。ジュース奢るから」
「何?ええことあったん?ほな、いつもの炭酸のやつな」
そして、当日。
いつもと変わらず、満面の笑みで現れた。
嬉しそうにいつもの炭酸を選び、緑の缶が2本落ちた。
それを拾う姿を見た時、今だと思ってしまった。
「俺らさ、付き合わへん。俺、お前のこと、好きやねん」
嬉しそうにしていた幼馴染の表情は一変…。
緑の缶が2本、自販機に取り残されたまま、数分の時が流れた。
俺にとっては、この数分はどの映画よりも長かった。
逃げ出したかった、恥ずかしかった、泣きたかった。
幼馴染が一言…。
「遅いわ…。もっと早く気づけよ、バカ」
その時、俺の思い出に残ったのは。。。
「炭酸、ぬるいなぁ……」
8/3/2025, 11:15:00 AM