🍵
「お前の飯不味すぎ。コンビニの飯食ってた方がマシだな。」
ああ、言われてしまった。
私は元々料理は得意じゃない。
だが、冴と同棲することが決まって、少しずつ、栄養に気をつけながら、
料理の練習をしてきた。
今まで冴も、
「前より上達したな。」
とか
「うめぇ」
とか。
褒めていてくれたのに。
冴が疲れて帰ってきて、不機嫌だったのに関わらず、
『冴!お疲れ様!ご飯あるわよ〜』
と、呑気に話しかけてしまった。
そして今ご飯を並べて一緒に食べ始めた時、
1口目でそう言われてしまった。
そして、
「もういい。コンビニで買ってくる」
と捨てられてしまった。
その後1人で食べるご飯は、いつもと変わらないはずなのに、
冴が居ないからなのか、味がなかった気がする。
次の日も、ご飯はつくってはいたが、
やっぱり冴は食べてくれなかった。
その日から、自分で作ったご飯すら、
食べた直後に吐いてしまうようになってしまった。
冴の顔を想像すればするほど、
涙と、何も混ざってない胃液だけでてくる。
その日の夜、冴が珍しく、先に口を開いた。
「すまなかった」
それだけ。
知らないのだろう。私は体重が3キロも減って、
食事が怖いこと。あなたのせいで。
『そう。美味しくないんでしょう?
たべなくていいわよ。コンビニのご飯食べて暮らせば?』
このぐらい言っても構わないだろう。
「ちげぇ。思ってねぇ。あの時はイライラしてて。
お前の飯食わないようになって、本調子じゃね『うるさい。ご飯は作ってあげるわ。けど、これからそんなこと言わないで、私がどんな思いで……!』」
「本当にすまないと思ってる。言うわけないだろ。だから、これからもお願いしたい……。」
『...ふふっ、面白。冴がこんなに萎れてるの初めて見た。』
「笑ってる場合か。」
まぁ、あっちから謝ってくれたし、1回ぐらい、許してあげてもいいかな。
ま、これ以上あんなこと言ったら許さないけどね。なんて。
🥀
「んだよこれ、こんなもん要らねぇ」
『私、頑張って選んだんだよ...?』
その時私は知らなかった。彼がプレゼントを嫌うなんて。
『ミヒ!これ、ミヒのために買ったの!受け取って!』
私はその時、彼 とお揃いの ネックレスを買って、渡してあげた。
どうしても彼とお揃いのものをつけたかった。
そして、初めに戻る。
「んだよこれ、こんなもん要らねぇ。」
『私、頑張って選んだんだよ...?』
「頑張って選んだからなんだよ、
しかもスパイクや、サッカーに必要になるもんならまだしも、ネックレス...?
試合中つけらんねぇし、邪魔になるだけだな。」
「こんな、何もわかってねぇのに感謝求めて
渡してくるからプレゼントは嫌いなんだ。」
ショックだった。ミヒなら喜んで貰ってくれると思ってたのに。
「とりあえず要らねぇから。今からチームで飲みに行ってくる。
家事しとけよ?🌸」
『ねぇ...!ミヒ...!』
バン、という音と共に、私があげたネックレスは、紙袋から出されもせず、床に投げ捨てられてしまった。
いつもなら、通訳イヤホンを外して、まだ慣れていない日本語で、
「イッテきまス」
と、言ってくれるミヒも、今日だけは何も言わずに出ていってしまった。
自分だけがつけていたネックレスも、
涙で濡れて気持ち悪い。
今回は私が悪かった。わかっているけれど
(このネックレスの先のハートは、これからもずっと完成することはないんだろう。)
そう思うと余計に涙が溢れて来てしまうのは、今日だけは許していて欲しい。