蝙蝠

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8/14/2023, 3:36:38 PM

時は過ぎ 約束の夏
あのチャリを迎えに行く夏
2人乗り おんぼろチャリで下り坂
風が通る 髪先が踊る

視界を染めたのは 違う色
2人で見る 青
少し色褪せて 空色だった
麦わら帽子は 置いてきた

色褪せた青 1人分薄い色
氷菓子は 冷たかった
鱗雲が 流れてく

夕焼けを背に
おんぼろチャリを 1人づつ
            お題【自転車に乗って】
          タイトル【来世の夏、3人で】

8/10/2023, 4:54:30 PM

車内の揺れ 極僅かな乗客
窓のあちら 数多の星が散る
月は何を映す 夢見る少女か或いは空腹の兎か

人里を抜け山を越え 走り続ける鉄塊
空を駆けず 海原を駆けず
示された道のみを駆ける
己の人生と同じように

この線路の終点は
まだ遠く 最後は1人
この人生は
終点がまだ見つからない
                 お題【終点】
          タイトル【その道レール上】

8/6/2023, 3:06:55 PM

夜の足音 陽を染めて
黒き憧憬 脳を侵す
遠くで獣の咆哮が 黒き太陽の再来と成る
まだ夜明けを 待ち侘びて

境に触れた 爪先が
先を急かして 動かない
首を絞めた 掌
後ろ指を指す 人差し指
顔を隠した 嗤い声
両の足首を掴む 十の指
胴に絡んで放さぬ 無数の腕
声を塞いだ 両の掌
門が閉まる 彼を見た最後の夜
亡いた 太陽を待ち侘びて

黒き太陽の再来を
偽の者だと 心臓を刳る
黒き憧憬は芯と成り その身を侵す
川の向こうに 太陽を知る

夜明けの足音 夜を染めて
いつしか色付いた太陽 隣にはタカラモノ
伸ばした手に 無数の腕が絡みつく
崩れた足場 初めての涙は海の味
                 お題【太陽】
        タイトル【海が綺麗だったのに】

8/2/2023, 4:25:42 PM

裸足で駆ける
常夜灯の点滅
優しさは まるで氷のやう
手を引かれるの
頰にナニか伝うの
優しさで包んで 手を引くの

また1人 かえっていくの
何重も優しさで包んだ手に引かれて
きっと ママとパパと笑えたの
扉を 前に後ろに
開けられないから 笑ったの
扉は 横に

あの子は何か 知ってるの
扉を前に 押さないの
あの子は 優しく手を引かれない
この檻の中で 笑うのよ
頰にナニか伝っても

パパとママと笑うのは
扉が開かないお仕置きの後
みんなのお腹が 満たされる頃
                 お題【病室】
         タイトル【今日ご飯はなぁに?】

7/28/2023, 2:34:55 PM

狐の面に 誘われて
遠くに見ゆるは 
揺らぐ提灯 灯りは弱く
祭り囃子に 呼吸を忘れ
目はまだ覚めず

火男面の男が 太鼓を鳴らし
老若男女の面達が
踊る 唄う 踊る
鳥居をくぐる 

後ろで誰かの呼び声に
狐の面は嗤い 沈んだ夢の中 
皆が手招く 輪の中へ
行きはよいよい 帰りは
                お題【お祭り】
         タイトル【危機を知らせる音】

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