【手を繋いで】
凍えた手のひらで目を覆って
自分から流れていく涙を止めながら
歪んでいく世界から目を逸らそうとした
僕の手は初めから何も乗っていなかったから
地面と水平にしたって何も減らないし
そもそもこんな僕を誰も見てはいなかった
そうやって現実逃避する手段しか無いと思ってたから
だけど覆った隙間から漏れ出す光が
楽しげで思わず長らく顔に引っ付いていた手を解くと
すかさず光り輝くきみの手が僕の手を攫っていって
こんな雪降るような寒い日に
震えた僕の手よりも暖かくって
顔には出せなかったけど
すごく安心したんだ
2024-12-09
【ありがとう、ごめんね】
いつも貰ってばっかりいて
ありがとうが募っていって
それと同じくらいの返せない自分が
不甲斐なくって
ごめんねの海も深くなってく
そろそろこんな毎日を終わらせなくっちゃ
きみの為にまだ動いていたいから
2024-12-08
【部屋の隅で】
少し長さが足りないカーテン
その隙間から冷気が流れて床を這って足元を冷やす
部屋の端に追いやったピアノの埃を払って
久々の鍵盤の感触をたのしんだ後
嫌いだった自分の音を変える為に
ひたすらにきみを想う音に相応しくなるように
僕の世界の全てであるこの部屋で
世界を変える音色を
2024-12-07
【逆さま】
お日様の光が届く世界で独り影を伸ばすけど
創られた光が届く場所で1人ただ輝く存在を見つけた
暗い場所を見つけるのが、作るのが上手だと思ってた
それが孤独だと寂しいと思ったことは無かったけど
指さされて居場所が無かった僕の陰は
きみのそばにある為に必要だったんだ
逆さまで一生きみに触れられないのだとしても
初めて必要とされ
初めて見つけた僕の場所
2024-12-06
【眠れないほど】
窓の外から聞こえる音が静かになって
タイピング音が部屋の中にやけに響いて聞こえる
カーテンの隙間から覗く星に
聴かせるように口遊むメロディが
僕を椅子へくくり付ける
夢の中でしか自由に出来なかった少年が
今は手のひらの中で世界を創れるようになったから
眠れないほどきみに夢中になるのも無理はないのです
2024-12-05