【時を告げる】
日の当たらないように守られた一角
中で流れている大切な空間を壊さない様に
慎重に扉を開ける
待ち侘びていた様に僕よりも先に光が差し込んで
開いたことで舞ったほこりを照らして
まるで宇宙空間のようで目を奪うが
最小限の光だけで済む様に扉を調整する
そこまでしてやっと本来の目的と対峙する
手のひらサイズの時計塔を持ち上げて
あの時の記憶を手繰り寄せる様に
触れなかった期間を取り戻す様に
ゆっくりと側面のネジをくるくると回す
手を離して紡がれたメロディは
あの時と少しも変わらぬまま
身体を伝って胸に届くと
僕の成長を教えてくれる
2024-09-06
【貝殻】
現実が押し寄せる波の狭間で
大事な世界とを区切る様に
境界ギリギリで濡れない様に
きみと歩いた
--少し進んで
ちくちくする白い床に腰をかけると
歪な形をした筒が目の前に散らばっていた
きみはそれを掬い上げて耳に当てると
僕の音が聞こえるって綺麗な笑顔で笑うから
僕も真似をしてそれを耳に当ててみる
しばらく待っても何の音も拾えなかったと
不満を漏らすと
これから好きな音を見つければいいよって優しく笑う
聞こえなかった疑問で頭を埋め尽くされて
僕にはその意味も気がつけなかった
きみから差し出された手を取って
また現実の波の狭間で輪郭をなぞる旅に戻ったのだった
2024-09-05
【きらめき】
目を瞑って世界を遮断しても
どうやら光は瞼を通してしまうようだ
塞げない耳が四六時中きみの音を拾うから
目を瞑って集中したかったのに
でもそうだ
確か以前はこの光さえ無かったはず
ではやはり
この瞼の裏に広がる夜空のきらめきも
きみの仕業なんだね
2024-09-04
【些細なことでも】
些細なことでもきみのことなら興味があるし
絶対に受け入れてくれるから
僕のことでも伝えたいんだ
きみにもらった言葉で世界が埋め尽くされて
色を変えたように
僕もきみに何かを伝えたいから
2024-09-03
【心の灯火】
道を見失った時、
いつだってきみが導いてくれるから
背中で潜んだ声も
貼られたレッテルも
指差す視線も
全部気にならない
僕でさえ気付けない僕の言葉と
覚悟を決めさせる暖かな声で充分
これからも走ってきみのところに行ける
2024-09-02