【貝殻】
現実が押し寄せる波の狭間で
大事な世界とを区切る様に
境界ギリギリで濡れない様に
きみと歩いた
--少し進んで
ちくちくする白い床に腰をかけると
歪な形をした筒が目の前に散らばっていた
きみはそれを掬い上げて耳に当てると
僕の音が聞こえるって綺麗な笑顔で笑うから
僕も真似をしてそれを耳に当ててみる
しばらく待っても何の音も拾えなかったと
不満を漏らすと
これから好きな音を見つければいいよって優しく笑う
聞こえなかった疑問で頭を埋め尽くされて
僕にはその意味も気がつけなかった
きみから差し出された手を取って
また現実の波の狭間で輪郭をなぞる旅に戻ったのだった
2024-09-05
9/5/2024, 2:28:38 PM