『今一番欲しい物』
今一番欲しい物:本を読む気力
理由:読みたい本は多いのに読めないから
↓↓創作します↓↓
ポキポキッ♪
いつもの通知音が鳴る。
案の定、バースデースタンプが「おめでとう!」と、ささやかに動いている。そう、今日は私の誕生日だ。
スタンプの後にシュポッと「今一番欲しい物は何?」とメッセージが送られてきた。
私は既読を付けてしまったことを後悔した。返信しなければならない使命に駆られるが、言葉が出ない。
正直を言えば何も要らないのだが、「何もいらない。」と返すのは流石に冷たすぎる上つまらないし、失礼だろうと思い、しばらく考えた後に「あなたが今一番欲しい物が欲しいかな。」と、返してみた。
すると、すぐさま「僕が今一番欲しい物は、君との時間だよ。思い出とか、ね。」と、思いもよらぬ返信がきた。
彼とは会ったことがないのだ。
なんとなく嫌な予感がした。返信の速さといい、セリフといい、女性の扱いに手慣れているのではないか、と心の奥で警鐘が鳴っているのに、私は食事の約束をしていた。約束をしてしまったのである。
─ 1年後 ─
「誕生日おめでとう。今一番欲しい物は何?」
去年と変わらない彼からのメッセージだ。
今年は、すかさずに返信をする「独身のあなた」と。
『視線の先には』
フッと、彼女は目を逸した。
釣られて僕もソチラを見る。
彼女の視線の先には、何もない。
視線を彼女へ戻す。彼女は恥ずかしそうにはにかみながら言った。
「ごめんね。癖なの。」
なんでも、人と会話をしている最中に、つい視線を逸してしまうらしい。突然あらぬ方向へ視線を向けるから、相手は皆釣られてソチラを見るとのことだった。
皆が皆、視線の先には何があるのか、確かめるらしい。
人間の無意識とは不思議なものだ。
『日差し』(創作:詩)
朝の日課になりつつある庭の水やり
色とりどりの花々が生き生きと咲いている庭
何十年も水やりをしていた母の姿が浮かぶ
朝の日差しの中、私が引き継いだ日課は
健全な朝の過ごし方のようで清々しくもある
何十年も水やりをしていた母はもういない
母の育てた花々が風に揺れた
朝の日差しの向こうに母を想う
『赤い糸』(創作:童謡)
だれかさんとだれかさん
ふたりの小指に糸つなぐ
結ばれる運命(さだめ)の真っ赤な糸は
何で赤く染めましょか
だれかさんは泣く泣く
ふたりの小指の糸を見て
ちょっきんちょっきん意地悪く
ハサミで切ってしまいましょ
それ見たとうのだれかさん
ふたりの小指に糸つけた
神さまに乞うたは切れぬ糸
指切りげんまん赤い糸
指切りげんまん赤い糸
『ここではないどこか』
今日も今日とて、ここではないどこか遠くのニュースが日常に溶け込むように溢れています。
ここではないどこか遠くのニュースがいつ何時ここになっても不思議ではないはずだし、わたしたちの日常は、それほどまでに脆いというのに、わたしたちの感性は平穏の危うさを封印してしまうらしいのです。
平穏な日常にあぐらをかいてはいけない気がするけれど、平穏な日常は、やっぱり平穏な日常であって、ニュースはやっぱり、ここではないどこか遠くの出来事だから、ついつい脆さを忘れるのですね。
明日も、皆様が平穏な日常を過ごせますように。